Club Paletteの連載「カラーデザインのアンテナ」でお馴染みの桜井輝子さんが、7月初旬に配色に関するとても興味深い本を出版された。大ベストセラーとなった『配色アイデア手帖』、2冊目の『日本の美しい色と言葉』に続くシリーズ3冊目の『世界を彩る色と文化』だ。発売1週間ですでに重版が決定するという人気ぶりだが、この本には世界の色がいっぱい詰まっている。今回は、桜井さんに本の誕生秘話と制作過程でのこぼれ話について伺った。
カラフルな写真や色コマとともにご紹介したい。
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世界の色と文化を本からヴァーチャルに体験 |
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最近出された『配色アイデア手帖 世界を彩る色と文化』という本がとても素敵で興味深いので、今日はこの本の制作過程を中心に、本にまつわるいろいろなエピソードを伺っていきたいと思います。
「空飛ぶ絨毯に乗って、世界一周するように」と冒頭に桜井さんが書いていらっしゃいますが、本当に1冊の中に世界の色がいっぱい詰まっていて、ページをめくるだけでも旅行した気分になれますね。 |
ありがとうございます。実は5年ぐらい前から、世界をテーマに面白い色や美しい色を紹介するコラムや記事を書きたいと思っていました。配色アイデア手帖のシリーズはこれで3冊目になるのですが、今回は「世界を彩る色と文化」がテーマです。コロナ禍で、現在は海外旅行もできないようなご時世ですが、“めくって旅する新しいデザインの本”とサブタイトルにもあるように、この本を読むことで世界の国々を感じていただき、ヴァーチャルに海外旅行を楽しんだ気分になってもらえれば、と思いつくった本です。
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“世界の色”という切り口で書かれた本はほかにもありますが、今までにない新鮮さを感じました。コンセプトや内容について、あらかじめ出版社側からのオーダーみたいなものがあったんですか? |
はい。まずは「フランス、北欧を中心にする」「単なる旅行ガイド的な内容はNG」「コアターゲットは知的好奇心が旺盛な30代、40代の女性である」というオーダーがありました。
そのうえで、「絶景ばかりだと、売れないからやめましょう」とか、「フランスだけで全体の3分の1以上使ってもかまいませんよ」、とか、「アジアは少なめでもよいのでは?」などというフィードバックもあって、それについては、「世界の絶景は入れたほうがよいものもありますね、ウユニ塩湖とかモロッコのシャウエンとか」「フランスだけ多いのもどうでしょう?世界はフランスだけじゃないですよね」「アジアは、コアターゲットである30代、40代の女性も繰り返し旅行しているので好きだと思います」とか、一つずつ話し合って検討を重ね、内容を深めていきました。制作に関わる全員が真剣勝負だったので、結構シビアな本音のやり取りもありましたよ(笑)。
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まずは100個のタイトルとイメージ写真を考え
そこから色を抽出しカラーパレットをつくる |
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それで最終的に「永遠の憧れ、フランス」とか「温もりと洗練の北欧」とか「太陽が輝くヨーロッパの国々」「懐かしくてかわいいアジアの国々」etc…と12のPARTが生まれたんですね。さらに各パートの中に、いくつものキャッチーなタイトルがついていて、読む人のイメージを喚起し、楽しい気持ちが膨らみます。 |
最初の段階でまず私が行った作業は、各パートを埋めるタイトルを100個以上考えて、それに合ったイメージの写真を探すことでした。ある程度まとった段階で、出版社さんのほうからいろいろと意見を出してもらって、ボツになるテーマもあったし、「ここのところ、もっと厚みを出したいのでもっと頑張ってください」とか、「テーマはいいけど写真がイマイチだね」とか、細かなフィードバックがありました。
写真も含めたテーマ出し自体は、1ヵ月もあればできたのですが、そのあとの出版社さんとのやり取りや内容の調整が2~3ヵ月かかっています。1年ぐらい前から準備を始めていたのですが、執筆期間は実は結構タイトでした。
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