
日本が世界に誇る伝統芸能の「能」ですが、「難解である」というイメージが多くの日本人にはつきまといがちです。それを払拭したい、能にもっと親しみをもってほしいと企画されたのが、この展覧会です。三井記念美術館所蔵の能面・能装束を、かたちや文様、色などさまざまな角度からとらえ、比較したりして、能の演目や役柄を想起させ、わかりやすく理解できるように楽しい工夫が施されています。
能面は、「面〈おもて〉」と呼ばれ、実に200種類を超えるバリエーションがあるといわれます。一見無表情に見える能面ですが、見る角度や光のあたり具合などによってさまざまな表情に変化するところが魅力です。「翁面・尉面・鬼神面・男面・女面」と大きく5種に分類されますが、それぞれのカテゴリーのなかで、「目と口を比べる」「髭と歯を比べる」「髪と表情を比べる」といったふうに、比較というかたちで見せ、ひもとくことによって、能面のもつ奥深い世界観に迫っています。
めったに見られない、能面の裏側も垣間見ることができるユニークな企画となっています。
能装束は、何種類かの組み合わせや着付け方で、それぞれの役柄にふさわしい「出で立ち」を表現すると言われます。これを色で見ると、たとえば、女性の装束では、「紅入り〈いろいり〉」といって若い女性を表す赤や朱など目立つ色彩を使用するものと、「無紅〈いろなし〉」といって中年以上の女性を表す緑や青、紫などを主に用い、赤系統の色が入らないものなどがあります。
また、襟の色などにも区別があり、たとえば女性をシテ(主役)とする能の場合は白、ワキ(脇役)の場合は、浅葱・樺などを用います。
唐織などの衣裳に見られる織・箔・刺繍などによって表現される文様も、能の舞台の役柄を表す要素のひとつです。今回の展示では、能装束の文様にスポットをあて、演目や役割とリンクさせて紹介しているので、能の舞台がより身近に感じられることでしょう。
「幽玄の美」の世界を心ゆくまで味わってみてください。

※3組6名様に本展覧会の招待券をプレゼント。
詳しくはプレゼント欄を参照ください。 |