 |
街の景観づくりにおいて重要な要素になる環境色彩。色の使い方次第では人に心地よさをもたらす反面、間違えると不快さをもたらす「騒色」になってしまいます。日本塗料工業会が主催する環境色彩コンペティション、「第16回 グッド・ペインティングカラー」新築部門において、最優秀賞を受賞した藤田純也氏と松田拓郎氏(竹中工務店)のお二人に、受賞作品である千葉県野田市にあるキッコーマン総合病院の色彩計画についてお聴きしました。 |
- 施主であるキッコーマン様から、「大豆の色を使いたい」というリクエストがあったと伺いましたが、はじめに外装色を決定するまでのプロセスと、決定した色について具体的に教えてください。 |
地域に根づいた歴史のある企業立病院なので、キッコーマンのアイデンティティを出したいと思っていました。醤油の原料である大豆特有の温かいイメージを大切にし、竹中オリジナルのカラーチャートから少しベージュがかった温かみのあるウォーム系の白を使って、ベースカラーとしました。塗装のほかタイル張りなど細かい部分でさまざまな白を使っていますが、晴れ、曇り、さまざまな
天候条件のもとで、モックアップをつくってあらゆる環境下における色の見え方を考慮しました。
また、「キッコーマンオレンジ」と「キッコーマンライトオレンジ」という2つのコーポレートカラーをルーバーの小口やサイン壁にアクセントカラーとして採用しています。 |
- 内装のカラースキームはどのように決定されましたか? |
優しい大豆の色からスタートして、「食と健康」を企業イメージとするキッコーマンのCIを考え、カラースキームを、元気の出る栄養素と言われるフィトケミカルを含む、代表的食材・7つの色に大別しました。まずはコーポレイトカラーにも使われているオレンジ、そして大豆の色にもある白、その他黒、茶、黄、紫、赤、緑です。これらを落ち着いた色に寄せるため、DICの「日本の伝統色」を参照し、外来の診療科ごとにテーマカラーを決めて、中待合いやベンチのアクセント色とし、ゾーンごとの性格づけをしていきました。例えば眼科は、ブルーベリーが目に良いので紫を使いました。ただ、紫に対しては、負のイメージを持たれる方もいるということで、何度も決め直し、薄い色を使うことになりました。小児科ではこれから成長して行くイメージでさまざまな緑色を使っています。 |
- 小児科の壁面に絵を描こうというアイディアや具体的なデザインはどこから生まれたのでしょうか? |
病院は一般的に冷たい感じがするので、アートワークによって子どもたちの緊張を和らげようと、ご提案させていただきました。しかし、一方的な提案だけでは働く方々の愛情もわきにくいので、ワークショップを開き、野田で生まれて働いていらっしゃる看護師さん等にも参加してもらって(参考:カラーコーディネーター2級テキストP273X地域を再生する色彩活動<色彩ワークショップ>)、野田のアイデンティティを表現するようにしました。アーティストの長谷川仁さんと
一緒に野田のまちを散策したり、大豆から醤油ができるものづくりを表現できないか、醤油工場に行って見学もしました。
ワークショップを通じて「生命の循環」をテーマに決め、新生児エリアから小児科まで、野田市の風景を背景に、植物の種から芽が出て、それが成長していくストーリーと連動していくようにしました。 |
 |