
江戸時代中期に活躍した天才絵師、伊藤若冲と与謝蕪村は、正徳6(1716)年、同じ年に生まれました。2人の絵師の生誕300年を記念して開かれる企画展です。
個性も画風もまったく異なるように思われる若冲と蕪村ですが、40歳を過ぎたころから本格的に絵に取り組むようになり、老いてもなお、旺盛な創作意欲が衰えなかった点、京都に居を構えていた点、そして中国や朝鮮の絵画に深く影響を受けている点などが共通しています。
若冲は、画箋紙を用い、吸湿性のすぐれた紙の性質を活かして、墨をぼかしても隣り合った墨同士が混ざらず、境目が筋のように白く残るのを利用した、「筋目描き」と呼ばれる技法で、
龍のうろこや菊の花の花弁を描きました。また「升目描き」といってモザイクアートの先駆けとなるような斬新な方法を用い、赤や白、深い黒など色彩による対比で、立体感を表現し、魅力あふれる花鳥風月を描いています。
さらに「裏彩色」という技法では、半透明の絹の特性を活かして、裏面にも彩色することで、色の見えかたを工夫しました。この彩色方法ではたとえば表に白、裏に黄土を彩色することで、金色に見えます。若冲は絵画へのあくなき探究心で、多くの興味深い作品を残しています。
一方、与謝蕪村は、俳句と絵画を一枚の画面に描くことで、まったく新しい表現方法を生み出しました。蕪村は、俳諧にも絵画にも秀でた才能を持った今でいうところの、マルチアーティストの先駆けのような存在です。
柔らかく、味わい深い独特の画風が、多くの人から親しまれました。若冲がともすると絵に対し、マニアックでストイックであったと言われたのに対し、蕪村は、軽妙洒脱で俳句や絵に専心しながらも人生そのものを愛したと言われ、多くの人から俳画や水墨画は親しまれてきました。
今回の対照的な2人の天才絵師の、興味深い作品を通じ、江戸の文化の豊かさと奥深さ、そして、心意気を感じたいものです。

※3組6名の方に本展覧会の招待券をプレゼント。
詳しくはプレゼント欄を参照ください。

白象群獣図 伊藤若冲筆 一面 18世紀 個人蔵
【展示期間】4/22〜5/10
White Elephant and Other Animals by Ito Jakuchu
18th century / Private Collection
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