eco検定(環境社会検定試験)とは

進化する大学の環境教育。授業の一環でeco検定を活用

香川大学経済学部 商品学研究室

古川 尚幸教授

香川大学経済学部 2年生
矢野 彩羽さん・吉岡 優花さん

香川大学 経済学部

1923年創立の官立高松高等商業学校をルーツに持つ、四国の国立大学唯一の経済学部。地域に根差し、実学を重んじる気風は、創立以来現代に至るまで受け継がれ、進取の気性と共生の精神に富んだ経済人を輩出し続けている。2010年から実施している学生提案事業「学生チャレンジプロジェクト」には常時10団体前後の学生主体プロジェクトが参画。地域に飛び出し、市民と一体となって地域の活性化や環境保全に取り組んでいる。

 

 

SDGs達成に向けた科学技術イノベーションの推進(STI for SDGs)が期待される中で、大学の多くがSDGs達成に向けた取り組みを積極的に進めている。学生に対する環境教育も重要度が増し、多くの大学で授業科目となっている。 eco検定を授業の一環で活用している香川大学経済学部の古川尚幸教授に導入の背景や検定試験の魅力をお伺いするとともに、実際に受験した2名の学生に受験の動機や受験後の変化について語っていただいた。

 

 

目次

  1. ■ますます重要視される大学の環境教育

  2. ■学生と環境問題をつなぐ仕掛けとして

  3. ■多面的評価の一観点として活用

  4. ■社会人になっても活かせる知識を身につけたい

  5. ■eco検定で主体的な学びを支える

 

 

 

ますます重要視される大学の環境教育

いま、大学でも環境教育が盛んになっています 

 

―現在、国内外の教育機関でもSDGs達成に向けた取り組みが盛んに行われていますね。
 御校ではいかがですか。


香川大学 古川教授(以下:古川教授):
そうですね。いまは国内どの大学でも、SDGsに取り組まなければ評価されない、といった時代になっています。本学でもさまざまな学部でSDGsに関連した内容の授業が増えていますね。

本学では、実学を重んじる校風から「学生チャレンジプロジェクト」といって、学生たちが主体となり、自ら様々な事業を行うことで学びを深めていますが、その中のひとつに環境をテーマに活動している学生ESDプロジェクトSteeeP(ステップ)があります。食品ロスをテーマとしたフードドライブ活動や小学校への環境授業出前講座など、創意工夫を生かした取り組みが学生主体で行われており、学生たちのSGDsへの関心の高さを感じています。

 

「商品学」の一部から、環境に関する科目が独立した

 

―古川教授ご自身は環境教育とどのように関わってこられたのですか。

古川教授:
わたし自身は1995年の香川大学着任当初から環境に関する科目を担当しています。従来より商品学には資源エネルギー論という分野があり、商品を生産するための資源やエネルギーに関する内容を扱っていました。その後、社会的に環境問題が重視されるようになってきた背景をふまえ、「環境システム論」、「資源エネルギー論」という独立した科目として扱うようになりました。


ーご着任から30年の間に、環境問題に対する意識の変化は感じておられますか。

古川教授:
はい、まず社会の意識が大きく変わりましたね。以前は「環境はお金にならない」などと言われていましたが、企業は「社会的な責任」を果たすことが重要視されはじめ、環境課題にも目を向けざるを得なくなりました。

学生の方も、以前は環境問題に意識が向いているというよりは”授業でやるからなんとなく学ぶ”、という雰囲気だったと思います。30年かけて社会の変化とともに、徐々に意識が高まっていったと感じます。

 

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eco検定を環境学習のモチベーション向上につなげたい、と語る古川教授

 

 

学生と環境問題をつなぐ仕掛けとして

学生のモチベーションにつながる”仕掛け”を探していた

 

―環境に関する授業を行う中で、感じていた課題はありますか

古川教授:
学生にとって、環境に関する知識を学ぶモチベーションを向上させるきっかけがないか、探していました。たとえば経済学部では簿記を学ぶ学生が多いのですが、彼らにとっては簿記検定試験がひとつの目標になっています。それと同じような”仕掛け”が必要だと思っていたんです。

そんな中でeco検定が始まることを知り、これはいいなと思いました。とはいえ、具体的にどんなものか分からないと学生にも勧められないし、授業での活用もできません。そこでまず、2006年に実施された第一回のeco検定を、自分で受験することにしたんですよ。

―古川教授は第一回eco検定の合格者でいらっしゃるのですね!

古川教授:
実はそうなんです。自分で受験してみて十分な手応えを感じたので、翌年以降からわたしの担当科目で評価のひとつとして導入しました。

 

「eco検定合格」で、学生時代の学習成果を分かりやすく示すことができる

 

―eco検定のどんなところに魅力を感じましたか。

古川教授:
就職活動で履歴書を書くとき、資格欄に記載できるのはやはりいいですね。学生時代に取得した資格となると運転免許しかない、という学生も多いので。

また、簿記などはどうしても人によって得手、不得手がありますが、eco検定は得意かどうかに関わらず、こつこつ勉強すれば合格につながる点も魅力だと思います。学生時代に環境に関心を持って真面目に勉強をしてきたことの良い証明になっているのではないでしょうか。 

多面的評価の一観点として活用

 

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古川教授の環境システム論では環境の視点からみた商品に関する知識も学習する


 

eco検定の合格を評価の一部として認定する仕組み

 

―ご担当科目の中でeco検定をどのように活用していますか。

古川教授:
授業の内容自体をeco検定に寄せているわけではありません。学生はeco検定の勉強をしているというよりは、その科目に関連した環境分野の勉強をしているという意識だと思います。ですが、eco検定の内容は広い範囲を網羅するように構成されているので、授業で扱う内容と重なる部分も多いですね。

eco検定の直接的な活用の場面としては、成績評価のところです。学生がeco検定を受験して合格すれば、単位取得のための評価に反映される仕組みにしています。評価のうち何割かを、eco検定に合格することで充当できるというわけです。

 

―なるほど。外部試験を入れた評価は、大学の評価制度としてユニークな取り組みなのでしょうか。

古川教授:
大学はいま多面的な評価が求められており、ペーパーテストに限らず、レポートやプレゼンテーションなど、学生の学びをさまざまな観点から評価しています。eco検定もそうした観点のひとつと考えています。

eco検定の受験はあくまで任意。学生自身が選択できるようにしているので、受験しないからといって評価で不利になるということはありませんが、多くの学生が受験していますね。

 

シラバスとオリエンテーションで周知

 

―学生にはeco検定や成績評価の仕組みをどのように案内していますか。

古川教授:
eco検定の合格が評価の一部に充当できる仕組みはシラバスに明記していて、学生は受講科目を決める段階で知ることができます。また、年度のはじめに行う授業オリエンテーションでも説明し、資料としても配布しています。学生はそうした情報を得たうえで、eco検定を受験するかどうか自分で選択することができます。

 

―では、はじめからeco検定受験を視野に受講する学生さんも多いのですね。
 古川教授のご担当科目では、年間で何名程度受験されるのですか。


古川教授:
2023年度は115名が受験しました。授業の受講者全体の半分近くが受けたことになりますね。

 

 

社会人になっても活かせる知識を身につけたい

 

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eco検定を知ったのは授業がきっかけ

 

―ではここからは、実際にeco検定を受験した学生のお二人にもお話を伺います。
 矢野さんと吉岡さんも、古川教授の授業がきっかけでeco検定を受験されたのですか。


矢野さん(経済学部2年):
はい、そうです。古川先生の授業がきっかけでeco検定を知り、今後の就職活動や、社会人生活でも役立ちそうだと思って受験しました。

吉岡さん(経済学部2年):
わたしも矢野さんと同じです。いまは、社会で何をするにも「環境」というワードが出てきます。環境に関する知識が一般的になる中で、社会人になるまでに勉強しておきたいと思って受験しました。

 

―試験勉強はどのようにしましたか。

矢野さん:
試験の1ヶ月ほど前から集中的に勉強を始め、通学時間を使って問題集や教科書を読み込みました。授業で扱った内容を検定試験の勉強でもう一度学習することができて、知識がより定着しやすかったです。

吉岡さん:
わたしはとにかく問題を解いていきたいタイプなので、1ヶ月ほど前から、正誤問題のテキストを空き時間に少しずつ進めました。

 

 

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検定をきっかけに、環境を意識した行動選択を

 

―お二人とも、短期間で集中して勉強されたんですね。実際に受験してみて、いかがでしたか。

吉岡さん:
時事問題が出題されたことが印象に残っています。日頃からニュースに触れて最新情報に触れておくことも大事だな、と思いました。 

矢野さん:
eco検定って、一問一答ではなく文章全体を読んで考えさせる問題が多いですよね。背景や他の事象との関連も含め、より深い理解につながったと感じています。

 

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―受験を通して新しい気づきや、日常の中での変化はありましたか。

矢野さん:
身近なことですが、エコバッグを使うとか、ラベルレスのペットボトルを買うとか・・・生活の中でいろいろな工夫ができることに気づきました。これから就職活動も始まるので、環境に配慮した取り組みをしている企業に目がいきます。それぞれの企業が具体的にどんな取り組みをしているのか、学んでいきたいと思っています。 

吉岡さん:
この先社会に出る上で、自分が環境を意識して活動できているかどうか、就職する企業や使うサービスが環境を意識したものになっているかどうかを考えながら、「環境に優しい選択」ができる人になりたいと思っています。

 

 

eco検定で主体的な学びを支える

 

行動を支える「知識の裏付け」を求めて

 

―学生のお二人から体験談を伺いましたが、他の学生さんにも何か変化は起きていますか。
 古川教授からぜひご紹介ください。


古川教授:
ちょうど先日、冒頭でお話した学生ESDプロジェクトSteeePに関わっている学生たちがeco検定の勉強会を始めたんです。というのも、日々現場で環境に関する活動をしているうちに、自分たちの活動にもっと確かな「知識の裏付け」が必要だと思い始めたそうです。eco検定のテキストを買って、みんなで次回のeco検定での合格を目指して勉強会をしながら頑張っているところです。

もともと環境に対する意識の高かった学生も、ベースとなる「知識」に関心を向けるようになったのは、良いことだと思いましたね。 

―eco検定を有効にご活用くださっている古川教授から見て、
 教育現場でeco検定を活用する場合、おすすめの学部や学科はありますか。


古川教授:
環境については学部や学科の区別なく全ての分野で必要となる知識ですから、大学ならば、教養科目で扱うと良いのではないかと思っています。多くの大学で環境に関する教養科目が設置されていますので、教養課程の段階でeco検定を受けて、得た知識を基に学部に上がって極めたい学問に向かっていく、という形も良いのではないでしょうか。

また、いまは小学校からSDGsについて扱っていますから、eco検定の内容についても高校生ぐらいになれば十分に理解できると思います。検定試験の受験ありきではなく、テキストを教科書的に使ったり、探究の時間でテーマ設定のための資料として使うこともできるのではないかと思いますよ。

 

―そうですね!現代社会において環境知識は専門分野も年齢も関係なく、すべての人が備えるべき
 基礎知識といえそうです。
 最後に、古川教授から今後の環境教育への期待や、展望があればお聞かせください。

古川教授:
地球温暖化をはじめとする環境問題は、様々な要因が複雑に絡み合う社会的な問題です。その解決に向けては、ある特定の専門分野の視点だけでは正解に辿り着くことはできません。そこには複眼的なものの見方が必要になります。これからの社会を担う若者たちには、自然科学や社会科学、人文科学などの専門を問わず、それぞれの立場から環境問題を捉え、その解決に向けて、ともに手を携えて挑戦してほしいと思います。

 

 

 

お話をうかがった香川大学経済学部 矢野さん(左)、古川教授(中)、 吉岡さん(右)


 

学校概要

大学名 香川大学 経済学部
所在地 香川県高松市幸町2番1号
設 立 1949年
設置コース 1学科5コース制
 経済・政策分析コース
 会計・ファイナンスコース
 経営・イノベーションコース
 観光・地域振興コース
 グローバル社会経済コース
学生数 1,118人(2023年5月現在)

 

※ 掲載内容は2024年1月取材時のものです。