eco検定(環境社会検定試験)とは

環境配慮の「本気度」を社内外に示し、商機につなげる

住友林業株式会社

代表取締役 執行役員副社長 川田 辰己さん

住友林業株式会社代表取締役 執行役員副社長。1962年10月生まれ。1986年住友林業に入社。2012年人事部長、13年人事部長兼人事部働きかた支援室長、14年経営企画部長、16年執行役員、17年常務執行役員、18年取締役、22年専務執行役員、24年代表取締役、執行役員副社長に就任し現職

住友林業株式会社

1691年(元禄4年)、別子銅山(愛知県新居浜市)開坑とともに、その銅山備林の経営を担ったのが始まり。明治後期、永きにわたる過度な伐採と煙害により周辺森林の荒廃の危機を迎え、1894年、失われた森を再生させる「大造林計画」を開始。保続林業という理念を掲げ、多い時には年間250万本の植林を実施し、豊かな緑を取り戻した。この、森林の維持・育成や伐採・製材にも力点をおくことにより、持続可能な経営である保続林業を確立したことが、現在の事業活動、そしてサステナビリティの原点となっている。
現在は木材・建材を国内外で製造・流通する木材建材事業、国内で戸建注文住宅や賃貸・分譲住宅などを手掛ける住宅事業、海外での戸建住宅の建築・販売を中心に集合住宅やオフィスの開発、中大規模木造建築事業を国内外で展開する建築・不動産事業、国内外の森林経営や森林アセットマネジメント事業、木質資源を有効活用する再生可能エネルギー事業を展開する資源環境事業などにも取り組んでいる。また、日々の暮らしをサポートする介護事業を中心とした生活サービス事業も行っている。

 

 

環境に対する意識が企業・グループ全体として非常に高い住友林業株式会社。従業員に環境に関しての幅広い、かつ最新の知識を身に付けるための手段として、eco検定の受験を推奨している。eco検定の導入に、どのようなメリットを感じ、実際のビジネスでどう活かされているか、また実際に会社として行っている受験サポートなどについてお話を伺った。

 

 

 

脱炭素社会実現に向けての取り組み

 

―「林業」という事業内容は常に環境に密接に関わるものであると思いますが、現在取り組んでいる環境活動について教えていただけますか。

当社は2022年に、SDGs達成の目標年である2030年を見据え、脱炭素社会の実現に向けてグループのあるべき姿を事業構造に落とし込んだ長期ビジョン「Mission TREEING 2030」を公表しました。2024年で3カ年の中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase1」が終わり、2025年からはPhase2に入りました。
長期ビジョンや中期経営計画を実現するにあたり鍵となるのが、社内外に向けて打ち出している住友林業の木を軸としたバリューチェーン「WOOD CYCLE(ウッドサイクル)」です。これは、川上から川下までの分野において再生可能な自然資本である「木」を活かした事業を展開することで、脱炭素社会の実現に向けた貢献をしていこうというものです。

 

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また、建設業界では原材料の調達から資材の加工・輸送、建物の施工、竣工後の改修、解体・破棄まで、すべてのサイクルにおいて多くのCO₂が排出されます。この排出量をいかに減らすかという世界的に大きな課題の解決のためには、まずCO₂の排出量を把握すること。そうすれば、脱炭素実現のための設計やプランが見えてきます。当社は建築の際に排出するCO₂の排出量等を見える化するソフトウェア「One Click LCA」の日本の代理店をしており、日本の建築業界における脱炭素設計のスタンダードとなるように、ソフトウェアの普及に取り組んでいます。

eco検定の導入理由は網羅的な環境知識を学ぶため

―eco検定の導入前からも、環境教育にはしっかりと取り組まれていらっしゃったと伺いました。

そうですね。eco検定導入前は、全従業員が受講必須のeラーニングや社内報、メールマガジン配信などを通じて、従業員の環境意識や環境知識の向上に努めてきました。
eco検定導入の理由は、一見すると当社事業に関連の低いと思われる分野も含めて、幅広い環境知識を網羅的に学んでほしいと考えたからです。当社の事業は自然資本を主要な資材や商材として取り扱っており、環境配慮の観点の中には、事業を更に発展させていく商機があるはずです。それを確実につかんでビジネスに発展させていくためには、従業員ひとりひとりが、ベースとなる幅広い環境知識を学ぶための取り組みを会社として当然するべきだと。そういった思いから社内全体での環境知識のボトムアップを図るため、2013年からeco検定の導入に踏み切りました。


―現在、すでに70%近くの従業員の皆様がeco検定に合格されていることを公表されていますね。御社での具体的なeco検定の活用方法について教えていただけますか。

当社ではビジネススキル開発の観点から、eco検定を推奨資格のひとつとしていて、昇格の際に評価される資格としても位置付けています。
eco検定に合格した従業員の名刺には、「エコピープルマーク」(eco検定合格者が使用できるマーク)を載せられるよう、名刺申請の仕組みも整えました。環境意識の高いお客様や取引先との商談の際に、エコピープルマークが会話の糸口になることもあると聞いています。

 

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eco検定合格者の名刺には「エコピープルマーク」を載せる
※名刺はサンプルです


対外的には、中期経営計画「Mission TREEING 2030」の中で「2024年度末までに、住友林業社員のeco検定の取得率を70%とする」目標を掲げるとともに、「サステナビリティレポート」で各年の実績を公表しています。2025年1月時点では住友林業社員のうち73.3%がエコピープル(=eco検定合格者)となりました。

積極的な合格サポートは、会社の本気度を示すもの

―多くの従業員の方が在籍されている中で、70%の達成は容易なことではないと思います。会社から受験支援などもされているのでしょうか。

はい、もちろんです。会社からは、合格者への受験料の支援に加えて、合格に向けてのサポートを積極的に行っています。具体的には、サステナビリティ推進部が独自に出題傾向を分析し、オリジナルの参考問題を作成して受験を予定している従業員に配信しています。試験期間開始の約1か月前から1週間に1度、1回6問ずつ。問題と解答だけでなく、関連した当社の取り組みを解説に盛り込むことで、事業とのつながりを理解し学びを深められるようにもしています。

検定試験ですから、基本的には公式テキストと問題集を繰り返し読み、問題を解いて自分で学習するわけですが、会社がそこまでサポートする姿勢を見せてくれると、受験する従業員にとっても励みになり、やる気につながります。それは、実際に受験して合格した私も実感したことですね。

さきほど話したように、当社では中期経営計画、サステナビリティレポートでもeco検定に関する内容を記載する他、こうした従業員のeco検定受験や合格に向けた様々なサポートを行っていますが、これらは会社の環境課題に取り組む「本気度」を示すもの。
従業員に「会社が本気で環境配慮に取り組んでいる」ことを明確にメッセージとして示し、そのためのサポートをしっかりと行うことで、それぞれのモチベーションが高まり、成果にもつながると信じています。

 

「知識の裏付け」で説得力が増す

―実際にeco検定を導入されて、これまでに感じた効果や影響などはありますか。

まず、eco検定は環境について網羅的に学ぶ、大変有効な手段であると考えています。eco検定は「ビジネスと環境の相関を的確に説明できる人材の育成」ということを謳っていますが、まさにその通りです。eco検定はあくまでも環境知識を身に付けるためのツールであり、手段。学習した知識を活かしてビジネスにつなげていくことが重要だと思っています。

そういった観点からお話すると、お客様や取引先との商談では、幅広い環境知識を学習していることで、会話の引き出しが増えたり、説得力が増したりしますよね。また、先ほどもお話した名刺の「エコピープルマーク」などをきっかけにeco検定に合格していることが伝わると、「環境知識を持っていることの裏付け」となり、信頼感も生まれます。
環境に関する知識を幅広く学び、身に付けていることの裏付けとして「eco検定合格」があり、エコピープルマークでそれを示すことができると考えています。

 

 

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―eco検定で学習した知識の裏付けがあることで、環境意識の高いお客様や取引先との商談にも自信をもって臨めるということもあるかもしれませんね。
これまでeco検定を推進いただいてきたご経験をふまえ、今後どのような企業・団体がeco検定受験に取り組むと良いでしょうか。


環境について網羅的に学ぶ手段として、あらゆる企業や団体が活用できるものだと思います。環境に関しての知識が不足していると感じる場合はもちろん、最新の情報を得るための良いきっかけになるのではないでしょうか。
eco検定を受験することによって、ビジネスの現場で活かせる環境知識を持った人材がますます増えていけば、目指すべき持続可能な社会の実現に近づいていけるはずです。

eco検定で環境知識のアップデートを

―最後に、今後の展望や、eco検定に期待することがあればお聞かせください。

地球環境も、解決するべき課題も、時々刻々と変化しています。環境に関しては世界中でさまざまな取り組みが行われており、関連した技術も進歩している。突き詰めていくと、地球環境と人間社会の関わり方といった大きな枠組みのことであり、常に変化し続けるものなので、eco検定で学ぶ内容も常にアップデートされることになるでしょう。今後も環境に関する内容を網羅的に学ぶことができ、かつ最新知識にも触れることができるようなコンテンツを、eco検定には期待しています。

当社は、2025年から次期中期経営計画「Mission TREEING 2030 Phase2」がスタートします。「木」の特性を活かし、脱炭素社会に向けた取り組みを継続して実践するとともに、「WOOD CYCLE」の源泉ともいえる森林の保全・回復はもちろんのこと、TNFD※が 2023 年 9 月に公表した開示提言を採用する「TNFD Early Adopter」に登録し、ネイチャーポジティブの実現、経済と環境を両立させた持続可能な社会の実現に向け、取り組みを加速していきます。
そのためにもeco検定を活用して最新の環境知識を学び、それを事業に活かしていくこと。社内の環境意識をさらに高めていくことを今後も継続して行っていきたいですね。
※ 自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)

 

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2024年10月に環境省の「自然共生サイト」に登録された冨士山「まなびの森」での植林活動。
1996年の台風17号で大きな被害を受けた富士山麓に広がる国有林の自然林再生プロジェクトを実施している。

 

 

―ありがとうございます。eco検定のテキストはおおよそ2年に1度のペースで改訂しており、最新の環境知識へのアップデートにもご活用いただけます。すでに過去に合格されたエコピープルの皆様にも、最新版のテキストをお手に取っていただけると嬉しいです。本日はありがとうございました。

 

企業概要

会社名 住友林業株式会社
所在地 東京都千代田区
創 業 1691年
資本金 55,101百万円(2024年12月31日現在)
売上高 20,537億円(2024年12月期)
従業員数 5,341人(2024年12月31日現在)
URL https://sfc.jp/

 

※ 掲載内容は2024年11月取材時のものです。

 

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