eco検定(環境社会検定試験)とは

持続可能な空港運営の実現に向けた原動力に、eco検定を

関西エアポート株式会社

執行役員 副最高管理責任者 伊藤利加さん

関西エアポート株式会社

関西エアポートグループは、オリックス株式会社とVINCI Airports(ヴァンシ・エアポート)を中核とするコンソーシアムにより設立され、2016年から関西国際空港(KIX)および大阪国際空港(ITAMI)、2018 年から神戸空港(KOBE)を運営している。空港の運営を通じて持続可能な社会の実現に貢献するため、環境負荷低減に向けた様々な取り組みを「脱炭素・循環経済・環境共生」の3つの軸で推進している。

 

 

関西エアポートグループは地域社会と連携して、持続可能な社会の実現への貢献をめざし、2050年度までに関西エアポートグループの事業活動に伴う温室効果ガス排出量実質ゼロをはじめ野心的な目標を掲げる。グループ全体でeco検定を積極的に活用、関西エアポートの新入社員はeco検定を受験する体制を整えており、グループ会社の関西エアポートテクニカルサービスは合格者数ランキングで2年連続1位(従業員数300名未満の部門)を獲得した。eco検定に取り組む狙いを、執行役員の伊藤利加さんに伺った。


 

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関西エアポートの伊藤利加・執行役員・副最高管理責任者


空港建設時からの環境取組が、新たな価値を創出

―関西エアポートグループは「脱炭素・循環経済・環境共生」の3つの軸で環境への取り組みを進めています。その概要を教えてください。

伊藤さん:
環境への取り組みは、2023年4月にスタートした環境計画において、中間目標である「環境目標2030」と長期目標である「環境ビジョン2050」を定めて取り組んでいます。

「脱炭素」については、グループの温室効果ガスの排出量を2030年度までに半減(2016年度比)させ、2050年度までに事業活動に伴う排出量を実質ゼロへ。「循環経済」については、廃棄物の削減・分別・リサイクルによって2050年度までに資源化率100%のZero Waste Airportをめざします。

「環境共生」については、周辺環境の監視を適切に継続するとともに、 2030年度までにグループの上水使用量を15%削減し、2050年度に向けて空港周辺の健全な生活環境の確保と自然との共生を進めています。

関西国際空港の場合、泉州沖5kmの海上に建設された人工島なので、その周辺には約60種類の海藻が生息する藻場が形成されています。これは造成時に護岸の大部分を緩やかな傾斜をもつ形状(緩傾斜石積護岸)とし、種苗供給などの工夫を積極的に展開してきた成果で、最新(2025年3月)の調査結果では大阪湾全体の藻場面積の約14%を空港島護岸の藻場が占めるまでに成長していることを確認しています。

藻場は生物多様性の保全のみならず、海洋生物のはたらきによって海にためられたCO2(ブル―カーボン)の吸収源という新たな付加価値を生んでいます。そのCO2吸収量を長年の調査データをもとに定量化することで、2022年度に初めてJブルークレジットの認証・発行を受け、2025年度にも新たな認証を取得しました。

また、30年以上取り組んできた藻場の保全活動が、世界的な空港管理団体である「国際空港評議会(ACI)」が主催する「Green Airports Recognition :グリーンエアポート表彰」で2024年に最上位の「プラチナ賞」を受賞したことも、関西国際空港が地域社会と共存共栄し、環境保全に努めている空港として認めていただいたようで、私たちの喜びとなっています。

 

 

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関西国際空港は国内初の完全24時間空港として1994年に開港。随所に環境への配慮を取り入れた


 

 

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環境へ配慮した取り組みの一つが「緩傾斜石積護岸」。護岸を緩やかな傾斜の形状にすることで広い範囲に光が届き、豊かな藻場とそれを取り巻く生態系が形成された。「Green Airports Recognition2024」の募集テーマである「生物多様性と自然環境に基づくソリューション」に沿った活動として、プラチナ賞に認められた


 

 

 

地域と連携した環境活動へ

―2050年度までに「温室効果ガス実質ゼロ」というのは、とても野心的な目標のように思います。これはスコープ1・2・3を含む全ての排出量を対象としたものでしょうか。

伊藤さん:
関西エアポートグループの事業活動に伴う温室効果ガス排出量を対象としています。スコープ1・2については、ターミナルビルの空調や照明の省エネ化、所有車両の電動化などを進めています。さらに将来を見据え、究極のクリーンエネルギーといわれる水素の利活用にも力を入れています。

電力由来のスコープ2削減において中心的な役割を担うのが、再生可能エネルギーの利活用です。空港内の未利用地や建物の屋根などに太陽光発電設備を設置し、地産地消型のエネルギー運用を通して脱炭素化を進めています。

一方、空港全体のCO2排出量という視点では、最も多いのが離発着する航空機によるもので、3空港ともに空港全体のCO2排出量の6割〜7割を占めています。その削減に向けた取り組みの主体は各航空会社ですが、関西エアポートとして協力して取り組めることから始めています。

具体的には、脱炭素化の実現を加速させる燃料として有望視されているSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の原料となる廃食用油の回収です。7割を超える空港内の飲食店舗の皆様にご協力をいただいていますし、近隣のイオンモール店舗にも回収ボックスを設置していただくなど、取り組みの輪が広がっています。

 

―自社だけで取り組むのではなく、さまざまなステークホルダーとの連携が環境への取り組みを進めるカギとなるようですね。

伊藤さん:
それはとても重要なポイントだと思います。空港にはたくさんのステークホルダーがいますので、地域社会や経済を盛り上げる公共インフラとしての役割を共に担っているという認識を共有することが大切だと考えています。

また、私たちの取り組みが客観的に評価される第三者機関による認証の取得も重要だと考えています。脱炭素については、3空港ともに「国際空港評議会(ACI)」のACA(Airport Carbon Accreditation:空港カーボン認証)でレベル4を取得しています。

これは7段階ある認証の上位3位にあたり、自社が排出するCO2の絶対量での削減に向け適切に排出量を管理していること、またステークホルダーとも連携を図りながら取り組みを進めていることが国際的に認められていることを意味しています。

 



eco検定が環境問題の「自分ごと化」を促すきっかけに

 

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ボトムアップとトップダウン両面からの取り組み推進が重要と語る


―2023年にeco検定を導入されたそうですが、その狙いを教えてください。

伊藤さん:
関西エアポートグループは、eco検定をグループ全体の環境意識を高めるマインドチェンジを促す機会と位置付けています。

関西エアポートグループは当社を中心とする8社で構成され、商業サービス、技術・インフラ、グランドサービス、安全・運用などの多岐にわたる空港業務をカバーしています。

eco検定は「落とすための検定」ではなく、グループで働く社員が環境問題を「自分ごと」としてとらえ、日々の業務と結びつけて考えるための基礎的な知識を得るファーストステップになると考えています。まずは環境推進グループのメンバー数名が受験して本格的に導入することを決めました。

グループの環境基本方針には「一人ひとりが日々の業務において地球環境の保全に努めます」と明記しており、例えば、関西エアポートの新入社員は入社1年目にeco検定を受験してもらったり、社員の受験料を補助したりしています。万一、不合格だったとしても再チャレンジしやすい仕組みを整えています。

 



eco検定合格者を起点に勉強会を立ち上げ環境活動を推進

―グループの1社である関西エアポートテクニカルサービスが、eco検定合格者数ランキングで2023年度・24年度と2年連続1位(従業員数300名未満の部門)を獲得しました。

伊藤さん:
関西エアポートテクニカルサービスは、空港における土木・建築施設や電気・機械設備の保守点検や維持管理を担う会社です。水の循環利用や廃棄物の削減といった環境課題に直結する業務が多く、技術職の社員が多い会社なので資格取得がスキルアップにつながると前向きにとらえられている方が多いことも大きく関係しているのだと思います。

同社ではeco検定合格者を中心に学びの輪が広がり、若手社員が主体となる勉強会を立ち上げました。勉強会では環境問題についてのディスカッションや、社外の先進的な事例の視察などを行い、そこで得た知見を自社の業務に還元しています。

こうした継続的な取り組みが、環境問題を「自分ごと」として捉えるきっかけになり、そして、社内全体の環境マインドの底上げにつながっていると思います。

同じくグループ会社である関西国際空港熱供給は、ほぼ全員がeco検定に合格しています。同社は関西国際空港に24時間体制で地域冷暖房を供給し、空港全体の省エネ化を牽引しています。エネルギーインフラを担う会社として、eco検定に合格することは重要だという意識が浸透しているのだと思います。

 

 

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関西エアポートテクニカルサービスの勉強会は若手社員を中心に自主的に立ち上げ、社外の先進的な事例の視察として、コスモ石油の堺製油所でSAFの製造などについて学んだ


 

 

経営判断にも「環境」が重要キーワードに

―2社のようなeco検定の成功事例を、グループ内に水平展開することも大切ですね。

伊藤さん:
環境に関する方針は「グループ環境推進委員会」で決定します。これは当社のCEOとCo-CEOが委員長を務め、各本部やグループ各社の責任者で構成される会議体で、横断的に取り組むべきテーマの検討や進捗状況の確認を行なっています。その中でeco検定も推奨しており、取り組み状況を共有しつつeco検定受験の進捗状況を共有しています。

環境の取り組みを推進するにはボトムアップによる社員のマインドチェンジが必須ですが、トップダウンによるリーダーシップも欠かせません。新しいプロジェクトを行う際には環境への影響も検討した上で投資判断を行っています。

―最後に、eco検定に対する期待と、導入を考えている企業・団体にメッセージをお願いします。

伊藤さん:
eco検定に対する期待としては、検定を難易度別に設けて合格者のステップアップを図る仕組みや、脱炭素または循環経済といった特定の分野に特化したプログラムもあれば良いのではないかと思います。

環境への取り組みが大切だと分かっていても、どこから手をつけて良いのか迷っている企業や団体の皆さんも多いのではないかと思いますが、第一歩を踏み出す機会として、eco検定を活用してみてはいかがでしょうか。

 

――合格された方が次のアクションを起こすなど、関西エアポートグループ全体でeco検定を活用されている様子がよくわかりました。関西エアポート様のように、様々な企業でeco検定を従業員全体の環境意識の底上げや企業の環境方針への理解促進としてご活用いただきたいです。
本日はありがとうございました。



企業概要

会社名 関西エアポート株式会社
所在地 大阪府泉佐野市
創 業 2015年
資本金 250億
従業員数 662人(2025年3月31日現在)
URL https://www.kansai-airports.co.jp//

※ 掲載内容は2026年4月取材時のものです。