ビジネス実務法務検定試験とは

社会と直結する法教育。法学部全体でビジネス実務法務検定試験の受験をバックアップ

桃山学院大学法学部

江藤 隆之教授 学部長

桃山学院大学法学部 田中 志津子教授 小西 みも恵准教授
桃山学院大学法学部3年生 内西 結衣さん 福田 颯希さん

桃山学院大学 法学部

「『世界の市民』の養成」を建学の精神に掲げる桃山学院大学が、社会課題の解決に必要な法律知識とリーガルマインド(法的思考力)の養成を目指し、2002年に設置 。社会とリンクした実践的な学びを重視しており、希望進路に合わせて専門性を高めるため、3つの履修コースモデルを設定。
・公務員試験に関連する科目を集めた「公務員コース」
・法科大学院への進学や司法試験受験を視野に入れた「法律専門職コース」
・民間企業への就職を希望する学生向けの「ビジネス法実務コース」

 

 

桃山学院大学では、ビジネス実務法務検定試験の受験をバックアップするため、法学部全体でさまざまな取り組みが行われている。学部長の江藤隆之教授、検定試験に関する科目を担当する田中志津子教授・小西みも恵准教授に、導入の背景や検定試験活用の工夫、検定試験の魅力についてお伺いするとともに、実際に合格した2名の学生(うち1名が2級、1名が3級)に、受験の動機や効果について語っていただいた。

 

 

目次

  1. ■大学に求められる実践的な学び

  2. ■単位認定や奨励金など、学生の意欲を高める仕掛け

  3. ■どんな進路を選んでも役立つ法律知識を身につけたい

  4. ■「検定試験合格」という可視化された学力を手に社会へ

 

 

 

大学に求められる実践的な学び

いま、大学には学修成果の可視化が求められています 

 

―大学改革による設置科目の弾力化などの影響で、大学独自の取り組みが増えていますが、桃山学院大学が重視していることは何ですか。

桃山学院大学 江藤教授(以下:江藤教授):
社会に出たときに活かせる実践的な学びを重視しています。その一環として、学生に専門資格の取得や検定試験受験へのチャレンジをすすめています。入学時には「法学部生のための資格・進路の手引き」を学生に配布し、さまざまな資格試験や検定試験の存在を知ってもらう機会をつくっています。

いまは、学生自身も保護者も、大学で学ぶことがどんな将来につながるのかという点に強い関心をもっています。また、教員も、そうしたニーズに応えることができる資質が求められています。教員の行う授業の質の担保という点でも、学問的な内容を教授していることを前提にして、さらに「検定に対応し得る授業になっているか」がひとつの観点になっています。

さらに、大学はいま、学修成果の可視化が求められています。学生には、大学で学んだ知識やスキルを可視化するために、さまざまな資格試験や検定試験にチャレンジし、それらの知識・スキルを手に社会に出てほしいと思っています。

 

 

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江藤教授に、法学部生向けに配布する「資格・進路の手引」を見せていただいた

 

 

検定試験受験で社会人としての基礎力を身につける

 

―社会で役に立つ学びのために、どんな取り組みをしていますか。

江藤教授:
実践的な法知識が身についていることを可視化できる検定試験として、ビジネス実務法務検定試験の受験を推奨しています。特に、民間企業に就職したいという学生にはチャレンジをすすめています。

民間企業に就職すれば、どんな部署に配属されたとしても、遵法意識をもって日々の業務を行う必要があります。ビジネス実務法務検定試験の受験を通じて、ビジネスに関わる法律を広く学ぶことが、学生の将来に役立つと考えています。


桃山学院大学 田中教授(以下:田中教授):
ビジネス実務法務検定試験に合格すれば、実務に関して必要な知識をもっていることの証明になります。就職する前に取得しておくことは、一定のアドバンテージになるはずです。学生にはそう話してチャレンジを促しています。

 

 

 

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「資格取得や検定試験合格は学生時代の努力の証明になる」と検定試験導入の意義を語る田中教授

 

 

 

単位認定や奨励金など、学生の意欲を高める仕掛け

検定試験受験を前提とした正課の授業を実施

 

―法学部全体で、ビジネス実務法務検定試験をどのように活用していますか。

桃山学院大学 小西准教授(以下:小西准教授):
本学が正課の授業として設置している「企業法入門」は、ビジネス実務法務検定試験の受験を前提とした内容を扱っています。使用するテキストも東京商工会議所の公式テキストと問題集を使っています。どんな進路を選ぶとしても、その先には必ず法律というルールがあります。具体的にどんなルールがあるのか意識してもらうことを念頭に置いて授業をしています。

たとえば、検定試験では労働法関連の問題が必ずといっていいほど出題されますが、その仕組みを理解している社会人は案外少ないのではないでしょうか。でも、その知識がないと、自分が働くときに不利益を被る場合もあるわけです。ですから、学生たちには、法律が自分の生活に深く関わるものなのだと知ってもらいたいと思っています。その点でもビジネス実務法務検定試験が扱う題材の幅広さは魅力的です。

ただ、とにかく範囲が広いので、法律を学び始めたばかりの学生にいかに教えるか、悩ましくもあります(笑)。

 

単位認定・奨励金で、合格への意欲を高める

 

―正課の授業の他に、ビジネス実務法務検定試験を活用している場面はありますか。

江藤教授:
本学では、各種検定試験に合格した人に合格に必要な学修時間や学修到達度を基準にして単位を与えられるよう設定した科目があります。たとえば、ビジネス実務法務検定試験3級に合格した場合、合格証を教務課に提出することで、「法学特講-ビジネス実務法務検定試験3級」に対し4単位が付与されます。2級に合格すると、3級の分も合わせて8単位が付与されます。

また、合格すると、「チャレンジ資格奨励金」が給付されます。今年度の場合ですと、3級が4,000円、2級は8,000円です。少額ではありますが、学校からのお祝いとして、テキスト代や試験料の一助として使ってほしい、という気持ちで給付しています。

 

―ビジネス実務法務検定試験導入の際に、苦労した点はありますか。

江藤教授:
いかに学生のやる気を引き出すか、という点が課題でした。そこで、彼らのチャレンジ意欲を高めるために、奨励金を設定したり、単位認定の仕組みを整えました。単位認定については、試験の難易度をみて、どのくらいの学習時間が必要かを精査し、適正な単位数を定めていくところに苦労がありましたね。

いまでは仕組みも定着し、「法学部生のための資格・進路の手引き」や、授業での教員の紹介などを通じ、学生にも広く知られるようになっています。

 

民間就職希望の学生を中心に受験

 

―ビジネス実務法務検定試験に関心をもつのはどんな学生ですか。

江藤教授:
やはり、民間企業就職希望の学生が多い印象ですね。わたしは刑法のゼミをもっているのですが、うちのゼミでも民間企業への就職を希望する学生は受験しています。法学部全体では1年間で100名程度の学生が受験しています。


小西准教授:
ビジネス実務法務検定試験の試験期間は年に2シーズンありますが、「企業法入門」の授業が4月から始まるため、第2シーズン(10〜11月頃)の受験を前提として進めています。第2シーズンの試験で合格できなかったら、翌年の第1シーズン(6〜7月頃)に再チャレンジする学生も多いです。本学の学生のビジネス実務法務検定試験3級の合格率は35%と、受験者全体の合格率よりも若干下がりますが、受験者の9割が現役のビジネスパーソンという試験ですので、学生たちはよく健闘していると思います。また、その分、合格すれば学生にとって大きな自信となるようです。

 

 

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「検定試験の背景や意図もふまえた授業内容を心がけている」と語る小西准教授

 

 

 

どんな進路を選んでも役立つ法律知識を身につけたい

 

受験のきっかけは大学で得た情報から

 

―ではここからは、実際にビジネス実務法務検定試験に合格した学生のお二人にもお話を伺います。内西さん、福田さんは何がきっかけで検定試験受験を決めたのですか。

内西さん(法学部 3年生 3年次に2級合格):
わたしは自分の強みとして履歴書にも書けるような資格を探していたのですが、「法学部生のための資格・進路の手引き」や資格サポートセンターに掲示されたポスターなどでビジネス実務法務検定試験の存在を知りました。ビジネス実務法務検定試験は内容が幅広く、就職したい先が明確でなくても持っていて損がない、と考えたのが受験を決めた理由です。


福田さん(法学部 3年生 2年次に3級合格):
わたしは民法の先生から、ビジネス実務法務検定試験を紹介されました。法律の基礎的な知識を、インプットとアウトプットの両方を通じて集中して学べるのではないかと思い、受験を決めました。

 

 

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学部全体でのさまざまなバックアップが、学生の意欲を引き出している

 

 

自分に合った勉強方法を知る

 

―他教科の勉強や授業、またアルバイトなどでも忙しい時期だと思いますが、どんなふうに勉強しましたか?

内西さん:
わたしは試験の2ヶ月ほど前から勉強を始めました。通学時間を勉強に充てて、テキストと問題集を何度も往復しました。受験を通じて、自分に向いている勉強の仕方が分かったのも良かったですね。


福田さん:
わたしは3ヶ月ほど前から、問題集のページを日数で割って、一日分ずつコツコツ解いていきました。アルバイト後の空き時間や寝る前など、細切れの時間を活用して暗記の時間に充てました。

解説を読んでも分からない時は、授業の後に先生に聞きました。先生に「ここはこう考えてみたら?」とヒントをいただいて、家に帰ってもう一度解き直し、理解を深めていきました。


田中教授:
授業の後に、福田さんはよく「先生、ここがわかりません!」ってテキストを持って質問しに来てくれましたね。


福田さん:
あとは同じタイミングで受験する友達と、「勉強、進んでる?」などと進捗確認をしあって、モチベーションを維持していました。

 

 

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「友人と励ましあいながら受験勉強を進めていった」と振り返る福田さん

 

 

就職活動にも、公務員試験にも学びが生かせる

 

―受験の手応えはいかがでしたか?

内西さん:
正直にいうと、かなり難しかったです。問題の選択肢の文章が長いので、一読で理解できる知識が必要になります。九九のように瞬発的に答えていく、時間との戦いでした。


江藤教授:
内西さんはわたしのゼミ生ですが、受験前にゼミで様子を聞くと「たぶん落ちます」って言ってましたね(笑)。


内西さん:
だから、受かったときはびっくりしました。わたしは2級に合格したのですが、そうすると自動的に3級の分の単位も付与されるんです。8単位もいただけて、とてもありがたいなと思っています。


福田さん:
わたしも内西さんと同じで、難しいと思いながら試験問題を解いていました。似た問題が過去問にありましたが、選択肢が少し変わっているんです。細かい内容まで正確に把握することが大事な試験なのだと思いました。試験後すぐに結果が出る分、緊張感もすごかったのですが、終了ギリギリまで見直しをしました。その結果、画面に「合格」と出たときは、ほっとしました。

単位認定と奨励金もいただきました。検定試験合格自体が自分の財産になりますが、そのきっかけとして、単位認定や奨励金の仕組みがあるのはとてもいいと思います。

 

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「不安だった分、合格して嬉しかった」と合格の喜びを語る内西さん

 

 

企業担当者との共通の話題にも

 

―受験して良かったと思ったできごとはありましたか。

内西さん:
会社説明会のときに、検定で触れた内容が出てきたんです。「この言葉、知っていますか?」と聞かれたのですが、(知ってる!)と思って嬉しくなりました。いま、インターンにも応募していますが、機会があったらビジネス実務法務検定試験のことを話題に出してみたいと思います。


福田さん:
わたしはビジネス実務法務検定試験合格の後、改めて自分の進路を考え、いまは公務員志望で講座を受けています。その中で「これはビジネス実務法務検定試験でやったところだな」と思うことがよくあります。勉強は大変でしたが、基礎となる知識が網羅的に身についたので、やって良かったですね。

 

 

 

「検定試験合格」という可視化された能力・知識を手に社会へ

 

受験をきっかけに進路への視野が広がる

 

―学生のお二人から体験談を伺いましたが、他の学生さんにも変化は起きていますか。

江藤教授:
受験した学生に聞くと、検定試験が、社会に出ることを見越した学習への動機になっており、学生生活にメリハリが出ているようです。特に、ビジネス実務法務検定試験は学生にすすめやすいですね。

「民間企業を受ける気があるなら受験した方がいい」と話すと、やる気のある学生は乗り気になります。そういった学生のための、いいペースメーカーになっていると感じます。


田中教授:
ビジネス実務法務検定試験を受験することで、ビジネスへの具体的な興味をもち、「この業種に進んでみたい」と考えるようになる学生もいます。学生の意識改革や、モチベーションの向上にも寄与していると感じます。

履歴書にも書いている学生は多いです。2級に合格した学生が、就職面接時に、面接官から「ビジネス実務法務検定試験の2級を持っているんですね」と話題に出していただいた、という話も聞いています。

 

 

ビジネスに必須の法知識を学生のうちに学ぶ

 

―ビジネス実務法務検定試験を精力的に活用くださっている桃山学院大学法学部の先生方から見て、教育現場でビジネス実務法務検定試験を活用する場合、おすすめの学部や学科はありますか。

江藤教授:
いま、オープンキャンパスなどで話を聞くと「民間企業に就職したいので法学部には進みません」という高校生が多いです。しかし、ビジネスには法務の知識が必須です。経済学部、経営学部といったビジネス系の学部にも、ビジネス実務法務検定試験の導入はおすすめです。また、反対に、法学部に導入すると、「民間企業で役立つ法務知識を勉強できる」ことを示すことができるので、法学部の志願者増にもつながるのではないかと思います。


小西准教授:
実は今回、わたしも受験してみたのですが、カスタマーハラスメントに関する問題が出てきたんです。ちょうどマスメディアなどで旅館の顧客トラブルが話題になっていたこともあり、こうした社会の動きにもきちんとアンテナを張り、日々キャッチアップしているかどうかも問われる試験なのだと感じました。

学生には、社会の変化を敏感に捉え、自分の身を守るために法律の知識を身につけてほしいと思っています。同じ願いをもつ教育機関の方にはぜひおすすめしたいです。

 

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学生のうちに網羅的な法知識を身につけられることの価値は大きい

 

学校概要

大学名 桃山学院大学 法学部
所在地 大阪府和泉市まなび野1-1
設 立 大学設立:1959年 法学部設置:2002年
設置コースモデル

法律学科 3コースモデル
 ・公務員コースモデル
 ・法律専門職コースモデル
 ・ビジネス法実務コースモデル

学生数 842人(2024年5月現在)
URL https://www.andrew.ac.jp/faculty/law/

 

※ 掲載内容は2024年11月取材時のものです。