2026年度までに「エコピープル」100%を目指す
東急建設株式会社
社長 寺田光宏さん
東急建設代表取締役社長。1957年静岡県生まれ。79年徳島大学工学部建設工学科(土木専攻)卒業後、東急建設入社。2010年執行役員鉄道事業部長、12年取締役常務執行役員土木総本部長、16年取締役専務執行役員土木本部長、18年代表取締役副社長執行役員、19年より現職
東急建設株式会社
1946年、戦後復興のため前身となる東京建設工業株式会社を創立。その成り立ちから「社会課題の解決」を使命とし、東急建設となった1959年以降も東急グループの一員として多摩田園都市開発事業をはじめ鉄道と一体となった街づくりに取り組む。近年は「渋谷ヒカリエ」(2012年)を皮切りとする渋谷駅周辺の再開発をはじめ国内の建設・土木事業、海外事業や不動産事業のほか、再生可能エネルギーなどの新規事業も展開している。
東急建設株式会社は2023年11月に「eco検定アワード2023」で大賞を受賞。マテリアリティ(経営の重要課題)のひとつに気候変動を掲げ、再生可能エネルギーへの転換を推し進めていることなどが受賞の決め手になった。2026年度までに全従業員のeco検定合格を目標に掲げ、2024年3月現在の合格率は90%近くに達している。トップ自らeco検定を推進する寺田光宏社長に、その狙いを聞いた。
目次
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■部門を問わず環境の知識が必要不可欠に
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■検定取得はゴールでなく継続的な知識のアップデートを
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■「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」の3つを掲げる
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■森の再生に従業員が参加し環境への意識を高める
部門を問わず環境の知識が必要不可欠に
―東急建設は2019年に「環境配慮経営」の推進を掲げました。その少し前、2018年6月から全社的なeco検定推進に取り組んでいます。寺田社長は最初に合格されたうちの一人だったそうですね。
当時、私は副社長でした。すでに環境技術部など一部の従業員はeco検定に合格していましたが、SDGsの採択やパリ協定の締結(ともに2015年)などの社会情勢を受け、環境問題に対する全社的な意識を底上げする必要性を強く感じました。そこでまずは提唱した私がチャレンジしてみようと受験し、無事に合格しました。
受験に向けて勉強をする中で、環境問題への理解を俯瞰的・網羅的に深められたのは大きな収穫でした。例えば、以前は「COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)」という言葉は知っていても、何年の会議で何が決まったのかといった流れまでは理解していませんでした。
それがeco検定を受けることで、COPを含め、環境問題を巡る動向を知ることができ、自分自身の環境に対する知識や意識がワンランク上がったことを実感できました。やはり勉強をして成果が上がれば嬉しいですし、今後への励みになりますから、これを全従業員に体験してほしいと思ったのです。
現在は文系・理系を問わず全ての部門で、環境に関する知識が必要不可欠です。例えば営業の現場ではZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)についての質問を受けたり、温室効果ガス排出量削減の提案を求められたりする機会が増えています。
すでにお客さまも相当な知見をお持ちで、脱炭素を求める社会の要請もますます高まっています。こうした声に応えられる体制を会社として整え、従業員の知識を伸ばすにはeco検定が最適だと考えています。
検定取得はゴールでなく継続的な知識のアップデートを
―2024年3月現在、従業員のeco検定合格率が89%に達しています。全社的に推進してきた成果でしょうか。
各部門の事業計画の中に必ずeco検定の受験計画を盛り込み、合格率を部門の評価に反映させる仕組みとしています。eco検定は対外的に認められる資格なので、取得者数などのデータを統合報告書に記載できることにもメリットを感じています。
当社は温室効果ガス削減にコミットするSBT(Science Based Target)や、企業の気候変動対策を評価するCDP、投資家に向けた情報開示の枠組みであるTCFDにも参加しています。これらの国際的なイニシアティブと同様に、eco検定も環境問題への取り組みを示す重要な指標に位置付けています。
―eco検定推進にあたり、工夫していることがあれば教えてください。
当社は全従業員の環境保全への意識向上に向け、2018年6月の環境月間を契機にeco検定の取得推進をスタートしました。
推進当初の受検率は低い状態でしたが、2020年度に全社の環境目標に資格取得率を掲げ、社内の取得資格として登録、検定合格者には受験料の補助を行うことにより、検定取得率が向上しました。
――2026年度までに全従業員が「エコピープル」(eco検定合格者)になるという目標も掲げていますね。
100%を達成できればとても嬉しいことですが、決してそこがゴールだとは考えていません。気候変動を巡る動きは目まぐるしく、国際的なルールや要求される目標も年を追うごとに変わっています。
こうした変化に対応できるよう知識をアップデートするには、1回合格して終わりではなく、2回目、3回目の受験も検討する必要があると思っています。
「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」の3つを掲げる
――「eco検定アワード2023」では、エコユニット部門の最上位である大賞を受賞しました。受賞理由の一つが、2030年を見据えた長期経営計画です。
当社は2030年の企業ビジョン「VISION2030」 で、「0へ挑み、0から挑み、環境と感動を未来へ建て続ける。」を公表し、その実現に向けた長期経営計画を「To zero, from zero.」と名付けました。「カーボンゼロ・廃棄物ゼロ」と「新領域へのゼロからの挑戦」という意味を込めています。
長期経営計画では、「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」を戦略の軸に据え、これらの3つの価値を提供することで、経済的価値と社会的価値を両立する持続的な企業価値創造を目指しています。
「脱炭素」における施策のひとつが、年間エネルギー消費量の収支がゼロになるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の推進です。当社の事業におけるCO2排出量の多くを占めるのが、お客さまに引き渡した後の建物から出るものです。そこで、2025年度に受注する設計・コンサルティング案件の50%以上をZEBにすることを目標としています。
サプライチェーン全体のCO2排出量の多くを占める、建築資材に関する排出量を正確に把握したいというニーズも高まっています。これに応えるために開発したのが「積み上げ式CO2排出量算定シート」です。シートは社外秘とせず、他企業にも使っていただき建設業界に広く普及させたいという考えから、ウェブ上で公開しています。
また、2030年までに自社で使用する電力を100%再生可能エネルギーに転換する目標を掲げています。その一環として、建設現場を対象としたバーチャルPPA(電力販売契約)を導入しました。
「廃棄物ゼロ」については再生材の利用推進や廃棄物を再資源化する技術の開発に、「防災・減災」についてはインフラの耐震補強工事などの施工はもちろん、豪雨被害予測技術の活用や被災シミュレーションツールの構築などにも取り組んでいます。防災・減災は震災対策のためはもちろん、近年増加する風水害への対応策という意味で、気候変動と密接に関係しています。
森の再生に従業員が参加し環境への意識を高める
――環境への取り組みとして「生物多様性の保全」にも力を入れていますね。2024年2月には「生物多様性指針」を策定されました。
森林は生物多様性の保全、CO2吸収源、防災林などさまざまな役割を担うので、森を再生させる活動はとても重要です。神奈川県で森林保全を行う「非営利型 一般社団法人Silva(シルワ)」の植樹活動に当社従業員も参加し、土地に合った樹木の調査や土づくり、苗木の植樹を行っています。こうして従業員自らが体験し、環境問題を「自分ごと」として腹落ちさせることがとても重要です。それが行動変容への第一歩になるからです。
これまでお話ししてきた東急建設の取り組みには、国内の建設業界初というものが少なくありません。そこには、初代社長・五島昇が説いた「誰がみても100%大丈夫だという事業なら何も東急がやらなくてもよろしい」という創業以来の精神が息づいています。
持続可能な社会の実現には前向きにチャレンジするDNAを守り継ぐとともに、従業員一人ひとりの環境に対する意識を高めることが求められます。それを実現する重要な施策にeco検定を位置付けています。
――最後に、eco検定の導入やeco検定アワードへの応募を検討されている企業・団体様に向けてメッセージをお願いいたします。
これまで話してきたことの繰り返しになるかもしれませんが、検定試験の合格やアワードの受賞といった形で第三者からの評価を得られることは、環境活動のさらなる推進や企業価値向上に向けてのモチベーションになります。
当社でもeco検定に取り組む前と現在では、環境活動に対する社内の意気込みや取り組みの姿勢が明らかに変わっています。チャレンジをすればしただけ、必ず効果が得られるので、ぜひお勧めしたいと思います。
★東急建設様は、「eco検定アワード2023」エコユニット部門において大賞を受賞されました!
受賞した活動内容の詳細はこちらから
https://kentei.tokyo-cci.or.jp/eco/people/award/ecounit/2023/93.html
企業概要
会社名 | 東急建設株式会社 |
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所在地 | 東京都渋谷区 |
創 立 | 1959年 |
資本金 | 163億5,444万円(2023年3月31日現在) |
売上高 | 2,888億円(2023年3月期決算) |
従業員数 | 2,628名(2023年3月31日現在) |
URL | https://www.tokyu-cnst.co.jp/ |