eco検定(環境社会検定試験)とは

eco検定で環境意識高め、循環型モデルで社会を変える

株式会社エフピコ

サステナビリティ推進室 サステナビリティ企画推進課 チーフマネージャー 若林大介さん

株式会社エフピコ

1962年の創業以来、食品に使われる発泡トレーの製造・販売を手がけ、国内トップシェアを誇る。1990年に食品トレーを回収してリサイクルする仕組み「トレーtoトレー®」を日本で初めて開始し、全国の消費者・小売・物流・自治体を巻き込んだ独自の循環型モデルを構築。回収率44%を達成し、使用する原料の約半分を再生原料で賄う。環境配慮型製品や省エネ生産設備の導入などを通じ、脱炭素・資源循環型社会の実現に貢献している。東京商工会議所が主催する「eco検定アワード」では、2023年に奨励賞を受賞した。

 

 

食品トレーの製造・販売を手がけるエフピコは、1990年に「トレーtoトレー」リサイクルをスタートし、循環型社会の先駆者として注目されている。環境対策がコストと見なされていた時代に、なぜこの取り組みを始めたのか。同社のサステナビリティ戦略やeco検定導入の成果について、同社サステナビリティ推進室サステナビリティ企画推進課の若林大介チーフマネージャーに聞いた。


目次

  1. ■「トレーtoトレー」の仕組み、危機感が原点

  2. ■eco検定を武器に、自社の環境価値を伝える

  3. ■プラスチックを賢く使う「活プラ」を提案

  4. ■eco検定アワードで外部からの評価を示す

  5. ■eco検定を通じて環境を「自分ごと化」

 

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エフピコサステナビリティ推進室サステナビリティ企画推進課の若林大介チーフマネージャー


「トレーtoトレー」の仕組み、危機感が原点

―1990年に食品トレーを回収してリサイクルする「トレーtoトレー」を開始しました。環境対策がコストと見なされていた時代に、なぜこの取り組みを始められたのでしょうか。

若林さん:
米大手外食チェーンが1990年に発泡スチロール製容器を廃止し、紙製包装に切り替えました。当時、容器製造に使用されていたフロンガスや、ごみ処理問題から消費者による不買運動が起きたためです。

さらに、日本でも全国の自治体でごみ処理問題が大きな社会課題となっていました。創業者の小松安弘は、「日本でも発泡スチロール製食品容器の消費者不買運動が起これば、事業の存続が脅かされるかもしれない」という強い危機感を抱きました。そこで、業界に先駆けて使用済み食品トレーの回収・リサイクルに踏み切ったのです。

当初は、回収したトレーを原料として再生ペレットに加工し、外部に販売していました。しかし、実際には付加価値がつけにくく、事業としての持続性に課題がありました。

そこで、「自社の中で循環を完結させなければ続かない」と判断し、回収した原料から自社製品のトレーを再び製造する「トレーtoトレー」の水平リサイクルへと転換しました。

自ら付加価値を生み出し、製品価格と、原料の両方を自社でコントロールする――。この「入り口」と「出口」を自社で管理するという発想が、現在の循環型ビジネスモデルの原点となっています。

 

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エフピコが構築した「トレーtoトレー」の仕組み 


 

―危機感を原点とした取り組みが、今や御社の強みになっているのですね。

若林さん:
そうですね。現在、当社では販売した製品の全重量に対し、44%にあたる重量の使用済みトレー・ペットボトルを市場から回収し、リサイクルしております。言い換えれば、使用する原料の約半分を再生原料でまかなっていることになります。新品の化石燃料由来の原料を半分近く削減できており、ほぼ循環型の仕組みを自社で実現している状況です。

発泡トレーはペットボトルと比べて回収が難しい素材ですが、当社では全国に回収拠点を設け、物流や工程の工夫によって効率的な回収ルートを構築しています。回収したトレーは、まず選別・洗浄・粉砕された後、再生樹脂として製品に再利用されます。

こうして生まれたリサイクル原料は、再び製品として市場に戻るため、資源の循環が社内で完結するモデルになっています。社内でこの仕組みを回すことで、原料コストの削減や環境負荷低減にもつなげています。

また、社員一人ひとりがこの循環モデルを理解し、自分の仕事が環境にどう貢献しているかを実感できることも、大きな強みになっていると考えています。

 



eco検定を武器に、自社の環境価値を伝える

―環境問題は日々変化していますが、「eco検定」はどのように役立っているでしょうか。

若林さん:
環境問題に関しては、海洋プラごみや資源循環、気候変動など、取り組むべき課題が次々と出てきます。そこで、社員全員が基礎から体系的に学べる共通のツールとして、数年前からeco検定を導入しました。

特に営業部門では、単に「SDGsに取り組んでいます」と言うだけでは活動内容が伝わらない場面もありましたので、知識の底上げが不可欠でした。

当初は社内で「合格したらSDGsバッジを付与する」といったインセンティブを設け、受験へのモチベーションを高めました。こうした仕組みを通じて、環境に直接関わりのなかった管理部門などの社員も積極的に受験するようになり、社員の幅広い層に環境意識が浸透しました。

現在、エコピープルは、エフピコ単体で280人(取得率26%)、グループ全体で1078人(取得率21%)に上っています。受験をきっかけに、「自分の業務が環境にどう貢献できるか」を考える社員が増え、営業現場でもeco検定の知識が「武器」になっています。

 

―営業の現場では、どのように活用されているのでしょうか。

若林さん:
例えば、お店を起点に資源を循環させる「ストアtoストア」と呼ばれる水平リサイクルの取り組みがあります。地域のお店が発着点となり、店舗で使用済みとなったトレーを回収し、それを再び新しいトレーとして採用いただく仕組みです。この活動を進める際に、取り組みの目的や背景を、社員一人ひとりが自信を持ってお客様に説明できるようになりました。

その結果、お客様自身も理解が深まり、「この会社と一緒にやりたい」と評価していただく機会が増えました。知識を共有し、同じ目線で環境課題を語れる関係が築けたことで、取引先との協働がより深まりました。

eco検定は単なる資格ではなく、社員をつなぐ「共通言語」として機能しています。知識を持つことが社員の自信となり、行動につながる。その積み重ねが、環境意識の底上げと企業価値向上を支えているのです。

 

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全国各地のスーパーマーケット各社と協働し、「ストアtoストア」の仕組みを構築している



プラスチックを賢く使う「活プラ」を提案

―気候変動や資源循環の観点から、プラスチックの使用量を減らす動きもあります。その中で、食品トレーの意義についてどのようにお考えでしょうか。

若林さん:
トレーの価値は、まずスーパーマーケットの作業性の向上にあります。袋だけでは難しい食品の充填や輸送作業を可能にしますし、輸送中の食品の品質保護や衛生面の確保にも欠かせません。

私たちは、プラスチックを有効に活用する「活プラ」の考え方を提唱しています。プラスチックはリサイクルがしやすく、管理しやすい素材です。この特性を生かして、循環型の仕組みを作ることが重要だと考えています。

 

―「トレーtoトレー」の水平リサイクルでは、CO2削減効果も高いと伺いました。

若林さん:
ライフサイクルアセスメント(LCA)で計算すると、当社のリサイクル品はバージン原料比で30〜37%のCO2削減効果があります。一方で、植物由来のバイオプラスチックはバイオマスを25%配合しても、5〜8%程度にとどまります。継続的なリサイクルと効果的な資源活用という観点で、当社の仕組みには大きな優位性があります。

また、当社の強みは「成形技術」にもあります。素材が変化しても、培ってきたノウハウを活かし、最適な素材と形状でお客様のニーズに応えることができます。

先ほどお伝えしましたとおり、現在は発泡トレーにおいて、水平リサイクルが進み、すでに原料の約半分を再生原料が占めるまでになりました。一方で、紙やバイオ素材など新素材の研究も進めております。今後、紙やバイオ素材など新たな素材への転換が進んでも、当社としては循環型社会の実現に向けた挑戦を続けていきたいと考えています。

 



eco検定アワードで外部からの評価を示す

 

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エフピコは「eco検定アワード」で奨励賞を受賞した


―こうした環境への取り組みが高く評価され、2023年の「eco検定アワード」で奨励賞を受賞されました。応募の背景や手応えについて教えてください。

 

若林さん:
eco検定アワードへの応募は、まず社内でのeco検定取得の動きをさらに加速させることが目的でした。報奨金制度などを設け、努力した社員に成果を還元すると同時に、「こうした取り組みが社外からも評価される」ということを明確に示したかったのです。

また、私たちのようにプラスチックを扱う企業は、常に公害問題や風評被害と向き合ってきました。ですから、社外から評価をいただくことは非常に重要です。

当社は1992年に環境対策室を立ち上げて以来、エコマークアワード大賞など様々な賞を受賞してきました。しかし、ある程度認知が広まったため、しばらく新しい外部評価には挑戦していなかったのです。

情報開示を進める中で、新たな社外評価の獲得を目指すことにしました。そのスタートが、このeco検定アワードです。

すでに回収・リサイクルの取り組みで長く連携してきたイオンモール様が、2021~2022年度に「eco検定アワード」を受賞されたことは、当社にとっても大きな原動力となり、一つの指標となりました。eco検定アワードの受賞を皮切りに、イオンモール様は他の環境系表彰事業への応募も加速しています。

さらに、この賞の獲得は、CDP(気候変動対策に関する情報開示)のスコア向上にも役立っています。私が担当になった2020年当初は、BやB-を行き来していましたが、社内教育や対外的な連携の取り組みが評価され、今では2年連続でAを獲得するまでに至りました。

eco検定アワードの受賞は、東京商工会議所からも高く評価されていることの証です。CDPなどの国際的な情報開示では社内教育の項目が重要視されます。社内教育の成果として、eco検定アワードを受賞していることを示すことで、対外的な信頼性を高めることができます。

 

 

―受賞後は、取引先との連携にも影響があったそうですね。

 

若林さん:
受賞式でお話しすることのできた、イトーヨーカドー様など、取引先のサステナビリティ担当者と直接コミュニケーションを取る機会が増えました。これまで、店舗の担当者で連携することはあっても、サステナビリティの担当者同士が直接会う機会はほとんどありませんでした。

互いの理解も深まり、店頭での食品トレーリサイクル啓発イベントなどを共同で企画・実施する取り組みに発展しました。

当社は「ファーストコールカンパニー(FCC)」を目指しています。これは、当社の製品問い合わせはもちろんのこと、環境課題やサステナビリティをはじめとしたさまざまな相談を最初に当社に持ちかけたくなる企業を意味します。

消耗品であるトレーを扱う企業ですが、環境価値を軸にお客様との協働を深め、信頼関係を築けるようになったのは、この取り組みの大きな成果だと考えています。

 



eco検定を通じて環境を「自分ごと化」

―eco検定の導入やアワードへの応募を検討されている企業・団体に、メッセージをお願いします。

 

若林さん:
当社では、資格取得に報奨制度を設け、社員の努力をきちんと評価する仕組みを整えました。その結果、多くの社員がeco検定を通じて、環境を「自分ごと」として捉えられるようになっています。

環境は、すぐに利益に直結しにくい分野ですが、会社が持続的に存続していくためには不可欠です。eco検定は、こうした環境を学ぶための「入り口」として非常に有効なツールです。まずは過去問を解いてみるだけでも、ご自身の仕事とのつながりが見えてくるはずです。

 

――eco検定が知識習得のツールに留まらず、会社全体の環境意識向上のための共通言語として活用されていることが分かりました。
さらに、「eco検定アワード」は社内の機運醸成だけでなく、社外に向けた自社の環境活動のPRや他社・他団体との連携にもつながります。

2025年度「eco検定アワード」受賞者表彰式は、eco検定を積極的にご活用いただいている事業者の皆様等を対象とした「交流会」を同時開催いたします!
エフピコ様のように、環境活動に関する企業連携の場として、本アワードをご活用いただければ幸いです。
「eco検定アワード」のエントリーは10月31日まで受付中、「eco検定アワード 交流会」は後日お申込みページを開設予定です。皆様のご応募をお待ちしております。

本日はありがとうございました。

 



(※)「eco検定アワード」とは

東京商工会議所は2008年から毎年、他の模範となる環境活動を実践したエコユニットの実績を称える「eco検定アワード」を実施しています。優れた実績を顕彰・周知することで、より多くの企業や団体が、積極的に環境に関する知識を身に付け、実際にアクションをおこす一助としてもらうことを目的としています。
2025年度「eco検定アワード」のエントリーは10月31日(金)まで受け付けております。
eco検定合格者(=エコピープル)2名以上でエコユニットとしてご登録のうえ、是非貴社・貴団体の環境活動を「eco検定アワード」へ応募してみませんか。

eco検定アワードの詳細はこちら
※エントリー期間 2025年8月4日(月)~10月31日(金)

eco検定アワード 受賞者表彰式・交流会
開催日時:2026年1月23日(金)
会場:東京商工会議所5階(東京都千代田区丸の内3-2-2(丸の内二重橋ビル))

 

 

企業概要

会社名 株式会社エフピコ
所在地 広島県福山市
創 業 1962年
資本金 13,150百万円
従業員数 988名(エフピコグループ: 5,250名)
URL https://www.fpco.jp/

※ 掲載内容は2025年10月取材時のものです。