eco検定の広がり
エコピープル支援事業

エコピープル・アクションレポート

佐藤 秀樹

社会的包摂を目指した環境保全活動の実践

佐藤 秀樹

千葉県

PROFILE

所属法人・役職
江戸川大学 社会学部 現代社会学科 専任講師
公益社団法人日本環境教育フォーラム 客員上席研究員
活動エリア
アジア地域、バングラデシュ、千葉県松戸市、流山市
年齢
46歳
eco検定合格年
2008年7月(第4回)

01.自己紹介

 環境保全活動の重要性について認識したのは、(独)国際協力機構の青年海外協力隊(職種: 野菜栽培)でエクアドルへ2年間赴任した時でした。街でのごみのポイ捨てや河川敷に放置される不法投棄の廃棄物による異臭や公衆衛生環境がひどく、どうにかしてこの環境問題を解決していかなければならないと思ったのがきっかけでした。

 帰国後は、大学院で開発途上地域の経済的貧困層の住民を対象とした環境保全活動等の研究を進めるとともに、農業系のコンサルティング会社や環境NGOで勤務し、開発途上国における環境保全型農業の技術移転や環境教育の人材育成事業等に携わってきました。

 現在は、国内外の環境NGOと連携・協働してバングラデシュの里山農業保全活動や都市の生物多様性保全等の事業に携わっています。また、国内の市民グループにも所属し、住民を対象としたSDGsの普及啓発活動も進めています。さらに、本業の大学では、「環境社会学概論」や「環境と教育」等の環境系の授業を担当し、若い世代に対して環境保全の重要性を伝えています。

 趣味は家庭菜園で、現在は、サニーレタス、二十日大根やコリアンダー等の香菜類等を栽培しています。

02.eco検定へのきっかけ

 環境に対する幅広い知識を身につけたいと思って勉強し、eco検定を受験しました。環境問題は、経済開発、貧困、教育やジェンダー等の様々な領域とも関連しているため、幅広い視点を持つことが不可欠です。eco検定を勉強して理解を深めることで、環境問題を複眼的且つ分野横断的にみる能力を培うことができるように感じます。

 また、昨今、重視されている国連の持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)について考える上でも、eco検定は極めて役に立ちます。eco検定は、現代社会の抱える様々な課題を包括的に捉え、その解決のためのアプローチ方法等について考える基礎となります。

03.エコピープルとしての活動

 私は、ここ20年程、エクアドル、ニカラグア、イラン、スーダン、ミャンマー、ベトナム、インドネシアやバングラデシュ等の主として開発途上国での経済的貧困層を対象とした農業・農村の活性化や環境教育を通じた人材育成の業務に携わってきました。私が取組む上で重視することはグローカルな視点を持ちながら、世界と地域がつながりを持って環境保全活動を進めることを大切にしています。以下に、現在の具体的な活動を3点紹介します。

 第一は、NGOと協働して開発途上地域で実施している取組みです。バングラデシュの小規模農家(40世帯)を対象とした地域固有の農作物の種子保全・維持管理・利用や、有機質肥料の活用による環境保全型農業の促進等を通じた里山農業保全の取組みを行っています。また、農村の貧困削減と農村の地域資源を活用して活性化を図る取組みとして、零細農村者を対象とした農林畜水産業の六次産業化や、エコ・グリーンツーリズム促進の取組みも進めています。さらに、同じくバングラデシュでの都市の住民を対象として生物多様性保全の教材開発やユースクラブ結成を通じた普及啓発を実施しています。

 第二は、日本での取組みです。私は、市民グループの一員として、市が実施する消費生活展でSDGsの内容に関するパネルを作成して一般市民への普及啓発を進めることや、自治体へのSDGsの取組みを促進させるための意見交換等を行ってきました。

 第三に、本業の大学では、環境関連の授業を行っています。授業では、現場での環境保全活動の実践経験とその研究をうまく組み合わせながら学生にできるだけわかりやすく伝えることや、環境問題の捉え方およびその解決アプローチ等を重視した課題解決型の授業を多く取り入れるようにしています。

 このように、私は、市民レベルでの活動を大切にし、SDGsにもある「誰一人取り残さない」というスローガンから、社会的包摂へ向けた環境保全活動の実践とその研究を進めているところです。

04.今後の活動計画

 エコピープルを増やしていけるよう、授業や市民社会にてeco検定の普及啓発をさらに進めていきたいと考えています。具体的には、eco検定のテキストを授業等で活用し、教科書で学習した内容が自分たちの暮らしでどのように活かして行動へ移すことができるか等について解説していきます。

 また、引き続きバングラデシュ等の開発途上国や国内における環境保全と経済発展の両立をどのように図るのかをテーマとして、これまでの実務経験と研究成果を活かしながら効果的な取組みを進めていきたいと考えています。さらに、日本の地域社会において、市民を対象としたSDGsの取組みをさらに促進し、その考え方と行動を浸透させていけるような普及啓発活動を継続し、社会的包摂へ向けた地域づくりを進めていければと思います。

 本業の大学では、将来の環境保全やSDGsのリーダーの育成を図ることができるよう、課題解決型の授業とその実践的な取組みをさらに実施していきたいです。

05.社会へのメッセージ

 現代社会を見ると、SDGsやESG投資といった新しい言葉への注目は集まっていますが、課題としては環境保全と経済・社会の発展のバランスをとりながら進めていくための具体的な方法や仕組みを構築していく必要があります。そして、私たちの暮らしを支えているのが、生態系、土壌、大気、水等であり、これらが健全に機能することで私たちは地球上で暮らすことができます。私たちは、環境を守るということの意義や重要性をもう一度良く考え、私たちの経済、社会を見直すことが求められます。昨今では、SDGsやESG投資等が重視されることで、私たちの生き方にも環境保全や社会貢献の持つ意味を良く考えて行動していく必要があります。

06.eco検定受験者、学生へのメッセージ

 環境と私たちの暮らしがどのようにつながっているのかについて、身の回りから考えてみることが大切です。例えば、飲食店やコンビニエンスストアでの食品ロス、タピオカ等のプラスチックストローや、自然災害の多発による生活環境への影響、家庭での電気のつけっぱなしや水の使い過ぎ等から、自分の環境問題を考えて見つめなおすことが重要です。自分たちが身のまわりでできることを行動へ移していくことが、環境問題を解決していくための第一歩です。

※この情報は2020年5月8日時点での内容です。