eco検定でサステナビリティ経営を加速する
大和リース株式会社
上席執行役員 設計推進部長・環境担当 山本圭一さん
理事 環境推進部長 池上勉さん
大和リース株式会社
大和ハウスグループの中核企業として、建築とリース事業を核とする多彩な事業を展開している。商業施設、物流施設、医療・福祉施設、教育施設、公共施設などの企画・設計・建築・運営を手がけるほか、緑化事業、駐車場建設など、多様なソリューションを提供する。近年では、公民連携(PPP/PFI)を活用した地域創生プロジェクトにも積極的に参画し、地方自治体と連携して、民間ホール、学習センター、学校宿舎など、さまざまな公共施設の整備・運営を手がけている。「eco検定アワード」では、これまでに大賞1回(2019年)、優秀賞を4回(2017年、2020年、2022年、2024年)受賞。
建築とリース事業を軸に、多角的なビジネスを展開する大和リース株式会社。社内の環境意識を高めるために2014年から「eco検定」を推進している。これまでに「eco検定アワード」で大賞1回、優秀賞4回を受賞した環境先進企業だ。同社のサステナビリティ経営のあり方やeco検定導入の成果について、山本圭一・上席執行役員(環境担当)と池上勉・理事(環境推進部長)に聞いた。
目次
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■利益よりも「安全」「品質」「環境」を優先
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■eco検定は「営業トークにそのまま使える」
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■若手が環境の事業化を目指す「未来環境研究所」
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■「サーキュラーな建設」の仕組みづくりを
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■eco検定アワードを通じて環境価値を発信し続ける
利益よりも「安全」「品質」「環境」を優先
―「サステナビリティ経営」を掲げ、環境への取り組みを積極的に進めています。背景には、どのような考え方があるのでしょうか。
山本さん:
当社は建設会社ですから、「安全」「品質」「環境」の3つを非常に重要な要素と位置付けています。社長自身も「この3つは利益よりも優先されるべきものだ」と明言し、その考え方が社内全体に浸透しています。
もちろん、企業として利益を生み出すことは必要ですが、それ以上に「安全」「品質」「環境」を大切にするという価値観が根付いているのです。
原点には、大和ハウスグループの創業者・石橋信夫が掲げた「公の精神」があります。創業者は「事業を行ううえで、どうすれば儲かるかではなく、どうすれば人の役に立つかを考えなさい」と語っていました。この精神は、私たちの行動指針としてグループ全体に脈々と受け継がれています。
当社には4つの事業部がありますが、そのうちの一つ「環境緑化事業部」は最も新しい部署です。今後、重点的に育てていく方針です。
―やはりトップからのメッセージは、強い影響力がありますね。社内の環境意識を高めるために、eco検定の推進にも力を入れていらっしゃいます。

山本さん:
eco検定の受験促進を始めたのは2014年春のことです。「社員の25%が合格」という目標を掲げ、「環境行動計画」の一環として活動をスタートしました。
ただ、秋になっても合格者はわずか4%にとどまっていたのです。そこで改めて全社に呼びかけを行い、本格的に推進し進めました。全事業所の取得状況を日本地図上に「見える化」し、取得率に応じて花が咲く表現を取り入れました。このビジュアル化が、社員のモチベーションを大きく刺激したと思います。
こうした取り組みを毎年継続したことで、受験者数は年々増え、今では合格率が96%にまで達しています。
この活動はグループ全体にも波及しています。大和ハウスグループには「環境経営会議」という場があり、グループ各社のeco検定取得率が比較・順位付けされています。当社が4位から3位と順位を上げていくと、「次は1位を目指そう」という機運が高まりました。
実際に1位を取ったら、他のグループ会社が「打倒、大和リース」を掲げ、良い意味での競争意識がグループ全体に生まれました。
さらに、当社には、「環境に良いことをすると褒められる」という文化があります。社内イントラの「Dサポ掲示板」では、全国の事業所から環境活動や社会貢献活動などの報告が日々投稿されています。例えば、「ペットボトルのキャップを集めました」「外来種の駆除をしました」「苗木を植えました」といった活動がリアルタイムで共有されています。
これらの投稿には社員が「いいね」をつけることができ、ランキングも表示されるため、ゲーム感覚で参加できます。それを見た社員が「うちでもやってみよう」と真似していくことで、自然と取り組みが広がっていくのです。「環境に良いことをするのが当たり前」「やったら褒められる」という空気が、社内にしっかり根付いていると感じています。

eco検定は「営業トークにそのまま使える」
―eco検定を社内で推進されて、どのような変化や効果がありましたか。
池上さん:
今では、eco検定は「持っていて当たり前の資格」として、社内にしっかり定着しています。もともとは環境意識の向上を目的に導入したものですが、営業の現場でも非常に役立っています。
「カーボンニュートラル」や生物多様性の国際目標「30by30」など、環境に関するキーワードはお客様との商談でも頻繁に登場します。こうした用語をきちんと理解し、自信を持って説明できるようになるための入り口として、eco検定はとても有効です。実際に、合格後に公式テキストを読み直した社員からは「営業トークにそのまま使える内容ばかり」といった声も寄せられています。
eco検定をきっかけに、社員一人ひとりが「自分の業務が環境にどうかかわっているのか」「これから何を意識して取り組むべきか」といった視点を持つようになりました。今では、eco検定が社内の「共通言語」となり、環境を「自分ごと」として考える土壌が育ってきたと感じています。
山本さん:
私自身も、eco検定の導入初期に受験し、無事に合格しました。実は社長もエコピープル(eco検定合格者)なのです。やはり、上に立つ人間が「自分も合格している」と言えることで、会社全体の空気が大きく変わると思います。
―社長が「利益よりも安全・品質・環境を優先する」と明言されているからこそ、ご自身がeco検定に合格していることにも、大きな説得力がありますね。
池上さん:
そうですね。事務局としても、eラーニングの提供や問題集の配布、社内での環境学習会の開催など、さまざまな学習機会やツールを用意しています。ただ、特別なことをしているわけではなく、根底にあるのは「やってみたい」「評価されたい」といった、誰もが持っている前向きな気持ちだと思うのです。
新入社員に関しても、入社直後からeco検定を受けることが「自然な流れ」になっています。強制ではありませんが、「次回の試験日はいつですよ」と案内すると、自分からテキストを手に取って勉強を始める。試験を通じて「仕事に役立つ」と実感し、さらに関心を深めていく。eco検定をきっかけに、ほかの環境課題にも目を向けるようになるケースが増えてきています。
若手が環境の事業化を目指す「未来環境研究所」
―サステナビリティと経営の統合は、多くの企業が抱える課題でもあります。御社はどのように進めていますか。
山本さん:
環境という分野は、なかなか利益に直接的に結び付きにくい側面があります。そうした中で、当社は2024年に社内プロジェクト「未来環境研究所」を立ち上げました。環境をテーマにした新たな事業の可能性を探る取り組みで、社内公募で集まった20代の若手社員たちが自らアイデアを出し合っています。
当初は、環境教育的な意味合いも大きかったのですが、社長から「事業化に向けて、本気で取り組みなさい」と指摘を受け、今後はビジネスとして形にするところまで目指したいと考えています。
―若い世代の環境への意識は高いですね。
山本さん:
やはり全体的に「熱量」が高いです。最近、学生の面接をする機会があったのですが、志望理由を聞くと、多くの人が「環境」をキーワードに挙げます。
「環境緑化事業部があるから大和リースを選びました」という学生もいらっしゃいますし、私が担当している設計職の面接では、「設計にも環境配慮が必要だと思い、大和リースを志望しました」という声もありました。
「サーキュラーな建設」の仕組みづくりを
―御社は、幅広い環境活動を展開されていますが、特に、リース業が原点ということもあり、サーキュラーエコノミー(循環経済)との親和性が高い印象です。

池上さん:
サーキュラーエコノミーの観点で、さまざまな取り組みを行っています。
例えば、公園の指定管理業務を通じて日常的に発生する剪定枝を「バイオネスト」という堆肥に加工し、地域に還元する取り組みを行っています。コストを抑えつつ、地域循環につながる活動として継続しています。

さらに、当社の原点であるリース事業でも、資材のリユース・リサイクルに力を入れています。中でも課題だったのが、プレハブ建材の「パネル」です。これは鉄板とウレタンを挟んだサンドイッチ構造で、特にウレタンの処理が難しく、従来は埋立処分されていました。
この課題に対し、電炉メーカーやスクラップ事業者と連携し、パネルを電炉で処理する新たなリサイクルの仕組みを構築しました。ウレタンは熱源として活用され、鉄板は溶かして再び鉄材に戻ります。再生された鉄は、プレハブの鉄骨資材や立体駐車場の構造材として当社の製品に再利用されています。このように、資源循環モデルが少しずつ実現しつつあります。
―建設業界にとって、生物多様性は重要です。秋田市と神戸市にある御社の施設は、環境省の「自然共生サイト」に認定されましたね。生物多様性の保全については、どのように取り組まれていますか。

池上さん:
当社では、全事業所を対象とした「生物多様性コンクール」を実施し、地域の生態系調査や絶滅危惧種の保護、在来種の保全・増殖など、実践的な取り組みを評価・表彰しています。
また、大和ハウスグループ全体の環境コンテスト「Challenge! グループ ECOコンテスト」にも参加し、社内外からの評価にもつながっています。
私たちが大切にしているのは、「自社の事業が生態系にどのような影響を与えているのか」を正しく理解し、そのうえで「今どこにいるのか」「どこを目指すのか」「どう進めるのか」「結果どうだったのか」という流れを意識することです。
この考え方を、社内では「PDCA(計画・実行・評価・現状の把握や対策」ではなく、最初に「A(現状把握)」を置いた「APDC」として浸透させています。まず現状を知ることからすべてが始まる、という姿勢です。
秋田の自然共生サイトは、非常に小さなビオトープですが、丁寧に取り組んできた結果、環境省から認定をいただくことができました。私たちにとっても大きな自信となり、今後の取り組みの励みになっています。

eco検定アワードを通じて環境価値を発信し続ける

―こうした取り組みは社外からも高く評価され、eco検定アワードではこれまでに大賞1回、優秀賞4回を受賞されています。アワードへの応募のきっかけや、社内での反応について教えてください。
池上さん:
最初は「まずは応募してみよう」という気持ちからのチャレンジでしたが、正直、初めての応募では情報の整理にとても苦労しました。ただ、その過程がこれまでの活動を見つめ直す良い機会になりました。単に賞を狙うというより、「今の私たちはどこまで来たのか」を再確認するプロセスだったと思います。
受賞後は、社内イントラネットでも内容を共有し、「eco検定の取得率が90%以上」という成果を社員自身が誇りに感じるようになりました。「自分もこの成果に貢献している」という意識が芽生え、組織としての一体感にもつながっています。
今では社内でも「来年はどうする?」「もっと良くしていこう」と自然に次のアクションを考える雰囲気が生まれており、受賞が次の取り組みの原動力にもなっています。
以前、ある方から「何度もeco検定アワードを受賞されていますよね」と声をかけられたことがありました。そのとき私は、「これは毎年取りにいくものなのです」と答えました。当社にとって、受賞は一度きりの実績ではなく、継続して環境価値を発信し続けるための大切なプロセスだと考えているからです。
実際、新入社員の中には「eco検定アワードを毎年受賞している会社」として当社を知り、興味を持って会社訪問してくれたり、入社を希望してくれたりするケースもあります。社員にとっても、「環境を大切にする会社で働いている」という実感を得るきっかけとなり、社内のモチベーション向上にもつながっています。
大和リースの事業の根底には、「儲かるからやる」のではなく、「社会から求められているからやる」という価値観があります。eco検定アワードを通じて当社の姿勢を、社内外に発信する意味があると考えています。
―その創業者のお言葉は、東京商工会議所の創設者・渋沢栄一の「論語と算盤」の精神にも通じると感じました。社員の皆さんはどのように日々の業務に活かしているのでしょうか。
山本さん:
当社では、「人の役に立つことを考える」という創業者の精神が、社是や社長方針として明文化され、社内文書では「公の精神」として繰り返し示されています。そのため、新入社員の段階から自然と意識するようになりますし、方針発表の場や日々の上司の言葉の中でも、その理念に触れる機会が多くあります。
そうした積み重ねの中で、「自分の仕事が誰かの役に立っている」「社会に貢献している」という実感が、少しずつ社員一人ひとりに根付いていくのだと感じています。
―eco検定の導入を検討している企業や学校、団体に向けて、応援のメッセージやアドバイスをお願いします。
山本さん:
当社では、各種資格に対して「スコア(点数)」を設定して「見える化」しています。一級建築士であれば何点、eco検定であれば何点と、一定の点数を付与し、評価や昇格の参考にもなっています。努力が数字として可視化されることで、やりがいにもつながりますし、周囲からも「頑張っているね」と気付いてもらえるきっかけになるのです。
さらに、最近では特定の必須資格がなくても、他の資格や取り組みの積み重ねで昇格できる人事制度を整えています。例えば「環境分野で力を発揮したい」「専門性を活かしたキャリアを築きたい」といった社員にも、きちんと道が開かれるようにしているのです。
もし「何から始めたらいいか分からない」という方がいれば、私はまずeco検定をおすすめしたいです。過去問を解いてみたり、テキストを読んでみたりするだけでも、環境問題の基本的な考え方や背景が理解できるようになります。
初めはSDGsの17目標や国際会議の年号など、覚えることが多く感じるかもしれませんが、合格後に教材を読み返すと、「営業トークや自分の仕事に直結する」という気づきがたくさんあると思います。
特に若い人たちは、少し学べばすぐに吸収して実践できる力を持っています。eco検定は、そうした人たちにとっても「環境を学ぶ入り口」として非常に優れたツールだと実感しています。
――企業活動において環境配慮が求められる現在、eco検定は単なる環境知識の習得ツールに留まらず、大和リース様のように、会社全体の環境意識向上に向けた共通言語として多くの企業で活用されています。
さらに、大和リース様がご受賞された「eco検定アワード」は、社内の機運醸成のみならず、社外に向けても自社の環境活動をPRできます。そんな「eco検定ワード」は現在2025年度のエントリーを受付中です。ぜひこの機会にご応募ください!
本日はありがとうございました。
(※)「eco検定アワード」とは
東京商工会議所は2008年から毎年、他の模範となる環境活動を実践したエコユニットの実績を称える「eco検定アワード」を実施しています。優れた実績を顕彰・周知することで、より多くの企業や団体が、積極的に環境に関する知識を身に付け、実際にアクションをおこす一助としてもらうことを目的としています。
2025年度「eco検定アワード」のエントリーは10月31日(金)まで受け付けております。
eco検定合格者(=エコピープル)2名以上でエコユニットとしてご登録のうえ、是非貴社・貴団体の環境活動を「eco検定アワード」へ応募してみませんか。
eco検定アワードの詳細はこちら
※エントリー期間 2025年8月4日(月)~10月31日(金)
★大和リース様は、「eco検定アワード2024」において優秀賞を受賞されました!
受賞した活動内容の詳細はこちらから
https://kentei.tokyo-cci.or.jp/eco/people/award/2022.html
企業概要
会社名 | 大和リース株式会社 |
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所在地 | 大阪府大阪市 |
創 業 | 1959年 |
資本金 | 217億6,838万2,519円 |
従業員数 | 2,404名人(2025年5月現在) |
URL | https://www.ecorica.jp/ |
※ 掲載内容は2025年7月取材時のものです。