福祉住環境コーディネーター検定試験とは

検定試験で培った専門性を現場で生かす

フランスベッド株式会社 メディカル事業本部

メディカル営業推進部長 荒木さん

フランスベッド株式会社

1949年創業。ベッド・マットレス製造の他、介護用品・福祉用具・在宅医療機器の販売・レンタル等の事業を行う。社名の由来ともなったベッド事業は「西洋文化に憧れる若者に、ベッドのある暮らしを届けたい」との思いから始まった。1983年の療養ベッドのレンタル開始を契機に、1987年フランスベッドメディカルサービス㈱を立ち上げ福祉用具業界に参入。2009年ベッド事業を主としたフランスベッド㈱とフランスベッドメディカルサービス㈱が合併し現在のフランスベッド㈱に。メディカル部門では、福祉用具貸与サービス、特定福祉用具サービス、住宅改修サービスの3つを柱とした事業展開を行っている。

 

 

一般用ベッドの販売で広く知られるフランスベッド。1983年に日本で初めて療養ベッドのレンタルを開始した、介護用品・福祉用具レンタルのパイオニアでもあり、福祉用具貸与サービス、特定福祉用具サービス、住宅改修サービスに取り組んでいる。 「福祉住環境コーディネーター検定試験」を社員に推奨している同社に、検定試験の活用方法や検定試験の魅力をおうかがいした。

 

 

目次

  1. ■介護保険導入で福祉用具が主要事業に

  2. ■現場を支える専門性を育む

  3. ■自分の専門領域を示す柱として活用する

  4. ■福祉・介護に携わるすべての企業の基盤に

 

 

 

介護保険制度導入により、福祉用具が主力事業に

フランスベッドメディカレント東京

行政との連携で福祉用具のレンタルに取り組む

 

― 一般的な寝具を扱ってきたフランスベッドが福祉用具を手がけるようになった経緯を教えてください。

当社が療養ベッドのレンタルを始めたのは1983年のこと。まだ福祉用具がいまのように普及していない頃のことでした。

現社長の池田の行政への積極的な働きかけにより、まず東京都府中市との間で福祉用品貸与の取り組みが始まり、その後、車椅子など徐々に扱える用具が増えていきました。他の自治体にも少しずつ広まっていきましたが、2000年の介護保険制度導入により飛躍的に需要が増加し、いまでは当社の主要事業に成長しています。



福祉用具に合った住環境の整備を

 

―福祉用具を扱う御社が住環境に着目する理由にはどんなものがあるのでしょうか。

私たちの事業は、福祉用具貸与サービス、特定福祉用具サービス、住宅改修サービスの3つを主要な柱としています。規模が最も大きいのは福祉用具貸与サービス事業ですが、仮に福祉用具を導入したとしても、それに合った住環境がなければ使いにくいものになってしまいます。福祉用具を利用する上で、住環境の整備はとても重要です。住環境を整備しつつ適切な福祉用具を導入することで、ご利用者さまのQOLを高める環境づくりが可能になると考えています。

現場を支える専門性を育む

住環境、医療と専門外の知識を網羅的に学べる

 

―福祉住環境コーディネーター検定にはどんな魅力を感じていらっしゃいますか。

私たちは福祉用具が専門ですので、専門外である住環境について網羅的に体系立てて学べることは大きな魅力です。たとえば、福祉用具ならば現物を見て触れば理解できることも、住宅の場合は建築現場に張り付いているわけにもいきません。これは、検定試験があるからこそ学べる分野だと思います。また、疾病疾患などの医療的な知識に関する基本を学べるのもありがたいですね。

私たちはこれまでに31.5万件(2023年12月現在)の施工事例をもっていますが、そうした日々の取り組みの支えとなる知識を身につけることで、お客様の状況をよりしっかりとアセスメントし、適切なご提案をしていきたいと考えています。



必要書類を作成する資格が得られる

 

―仕事にどのように活かすことができますか。

たとえば、介護保険制度では住宅改修に際して理由書の提出が必要となります。理由書は誰でも作成できるわけではなく、自治体によって差はありますが、主にケアマネジャーをはじめとして、理学療法士、作業療法士、そして福祉住環境コーディネーター2級以上の専門職が作成できます。そういったなかで、資格を有する弊社の社員が作成することもありますし、自分で作成しない場合も理由書を作成できるだけの知識量がある、という証明になります。これは合格の大きなインセンティブになるので、社員に受験を推奨する際にも必ず説明しています。

自分の専門領域を示す柱として活用する

新入社員には2級までの取得を推奨

 

―社員の皆さんにはどのように勧めていらっしゃいますか。

入社後に行う集合研修で、メディカル職の社員には必要な資格として挙げています。これからどうやってスキルアップしようかと理想を持って入社してきた社員が大半ですので、「必ず2級までは取得してください」と伝えています。最近では、専門学校の学生さんを中心に、入社前に取得している人もいます。


―取得することで個人の評価につながりますか。

資格を取得すると社員データベースに記載されるので、そこで社内認知がはかれます。とはいえ、一番の効果は名刺に記載できることではないでしょうか。お客様や関係者に自分の専門領域を示す上で、大事な柱になっていると思います。



提案の幅が広がり、コミュニケーションの接点になる

 

―荒木さんご自身も2級試験に合格されていると伺いました。日々の業務上で、検定試験が役に立つと実感できるシーンを教えてください。

お客様へのご提案の幅が広がると感じています。たとえばお客様がパーキンソン病を患っていらっしゃる場合、現時点では出ていなくても、将来的に新たな症状が出てくる可能性があります。そうしたときに、私たちは検定試験でどのような症状があるのか詳細に学んでいるので、症状の予測や予防も含めてご提案することができます。また、住宅の内部構造など、建築物の知識についてはケアマネジャーさんにとって専門外ですので、「説明してほしい」とご依頼をいただくこともあります。そんなときは、検定試験で学んでいて良かったと思います。

こうした機会があるので、私は検定試験の合格後も折に触れてテキストを見返しています。「そうか、ここはこういうことだったか」と新たな気づきのきっかけになることも多いです。

福祉・介護に携わるすべての企業の基盤に

よりよい暮らしのためのプラットフォームづくり

 

―福祉・介護業界はさらなる成長が見込まれる分野ですが、今後の展望を教えてください。

高齢化によって、今後は生活介助が必要な人が増えていきますが、例えば、手すりを1つ付ければ、24時間人がついていなくても自分で生活できるというケースもあります。そう考えると、福祉用具や住宅改修は、介護保険制度のなかでもコストパフォーマンスが高いと思います。

近年では福祉・介護分野もDXの波が広がりつつあり、システム系の事業者の参入も進んでいます。今後はそれぞれの事業者が手がけるプロダクトやサービスを提案するだけでなく、それらを組み合わせた施設設計・運営や、在宅も含めたプラットフォームづくりといったところに進んでいくのではないでしょうか。実際にそうした動きが少しずつ生まれてきています。弊社もその一員として貢献できればと考えています。

そういった状況のなかで、これから福祉・介護分野に新規参入する事業者さんにも自社の専門領域だけでなく、この検定試験を通じて一定の知識を身につけていただけると、うまく連携を図ることができ、利用者さまのQOLの向上につながるはずです。必要な知識を身につけて、手を携えて福祉・介護環境の整備に取り組んでいけるといいですね。

 

企業概要

会社名 フランスベッド株式会社
所在地 東京都新宿区
設 立 1946年6月5日
資本金 56億450万円(2023年8月1日現在)
売上高

585億7,800万円(2023年3月期決算)

従業員数 1,398名(2023年3月31日現在)
URL https://www.francebed.co.jp/

 

※ 掲載内容は2023年6月取材時のものです。