eco検定導入をきっかけに従業員の行動変容が起きる
株式会社イトーヨーカ堂 サステナビリティ推進部
GM 小山さん
セブン&アイ・ホールディングス サステナビリティ推進部
伊藤さん
株式会社イトーヨーカ堂
1920年創業。「信頼と誠実」を社是に掲げ、日々の暮らしに寄り添う生活インフラとして、ステークホルダーの声や抱える問題に向き合い、本業を通じた社会貢献に取り組んでいる。
マネジャークラスを中心にeco検定を導入している株式会社イトーヨーカ堂。従業員それぞれが環境知識を身につけ、自ら行動を起こせるようになることを目的とし、CSV(Creating Shared Value)の一環として取り組んでいる。年々複雑化する環境問題について体系立てて学べることが決め手となり、2014年からeco検定の取得を推進。導入から約10年が経った現在、各店舗で環境に関連するPRが自発的に行われるなど、行動変容が起きている。同社に、導入の背景やその成果をおうかがいした。
目次
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■年々深刻化する環境問題。最新の知識を学ぶ機会を作る
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■全社的な取り組みで、社内への浸透をはかる
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■知識を身につけることで、現場での行動が変容する
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■環境に対し、サプライチェーン全体で行動する
年々深刻化する環境問題。最新の知識を学ぶ機会を作る
早期から続けてきた環境への取り組み
―環境問題は世界的に取り組むべき大きな課題として、世界各国で対策が進められています。
日本でも様々な企業が独自の取り組みを始めていますが、御社は早期から
環境への取り組みを進めてこられたとうかがっています。
これまでの取り組みについて教えていただけますか。
株式会社イトーヨーカ堂 小山さん(以下、小山さん):
当社は食品を中心に、お客様の暮らしを豊かにするための商品サービスを提供しています。1991年と比較的早期から、店頭での紙パックやビン、カンなどの資源回収とリサイクルなど、環境を意識した取り組みを続けてきました。さまざまな地域に出店させていただいているので、地域のみなさまと一緒に社会課題の解決ができないだろうか、との思いから始めた取り組みです。その他にも、店舗から出た食品残渣を堆肥にして農場で使い、採れた作物をお店で販売する環境循環型リサイクル(セブンファーム)の取り組みも進めてきました。
社会変化に対応し得る、普遍的なビジネススキルを高めたい
―なるほど。御社は、事業の特徴を生かして環境活動を続けてこられたのですね。
環境に対する取り組みを進める中で、課題になっていたことはありますか。
セブン&アイ・ホールディングス 伊藤さん(以下、伊藤さん):
企業が環境問題に対して具体的な取り組みを行っていくためには、従業員への教育が大切だと思っています。当グループでは従来、従業員の教育については店舗業務に関する知識や技術を現場で教える形が主流でしたが、やはりそれだけでは社内に”閉じた”ものになってしまいます。世の中の変化に対応するためにも、普遍的なビジネススキルをもっと高めていく必要がある、と考えていました。特に、年々深刻化する環境問題や気候変動についてはお客様の価値観も変化しており、従業員の環境知識をブラッシュアップする必要性を感じていました。
―そうした課題感の中で、eco検定を導入されたのですね。
伊藤さん:
はい。セブン&アイグループでは2014年度から従業員のeco検定取得を推進しています。具体的には受験料の補助や勉強会の開催などを通じて資格取得支援を行っており、2022年度は約800人が合格し、累計合格者数は1万人を超えました。
全社的な取り組みで、社内への浸透をはかる
全社的に取り組むCSRの一環としてeco検定を導入
―人材育成の一環としてのeco検定導入は、どのように決定したのですか。
小山さん:
イトーヨーカ堂では、CSRを全社的な活動と位置づけ、CSR統括委員会を社長直下に設置しています。その中の環境部会で、従業員の学習機会としてeco検定を推進することを決定し毎回結果報告もしています。
―eco検定の導入にあたっては、どのような期待がありましたか。
小山さん:
eco検定は、テキストで体系立てて環境知識の基礎を学べる良いツールです。環境問題がこれだけ深刻な状態になっている今、環境に対する知識がなくては店舗の運営もできません。eco検定を通じて知識を得ることで、なぜ環境に配慮した事業運営が必要なのか、その背景に対する理解が深まるはずです。例えば店舗でペットボトルやトレイを回収するにしても、単なる作業としてではなく、共感しながら、主体的に行動できるようになるだろうと考えました。
トップが意思を示し、人事評価にもつなげた
―導入にあたって、苦労したことはありますか。
小山さん:
導入当初は、まずは幹部から受験を、と話していたのですが、実際のところ、店長が受験することになると勉強会参加や試験などに時間を使わねばなりません。そのため現場では店舗に店長がいないと困るといった声が上がることもありました。当時は、経済的価値と社会的価値の両立がそれだけ難しかったのだと思いますが、そこを丁寧に説明し、理解を得ながらやってきました。
―eco検定の意義や内容について、社員にはどのように伝えていますか。
小山さん:
当社では、会長、社長もeco検定を受験しており、店長会議の折には「環境に対する知識なくしてリーダーシップは取れない」と、店舗運営に必要な知識としてeco検定のことを伝えてもらっています。
また、人事評価においても、環境問題を含めた社会課題の解決に寄与するアクションは評価軸のひとつになっています。eco検定も個人のスキルを示す資格のひとつとして認められており、重要なものであるという発信も人事の方からしてもらっています。
知識を身につけることで、現場での行動が変容する
「お客様と一緒に課題解決を」との思いが情報発信につながった
―eco検定の導入で効果を感じた事例があれば教えてください。
小山さん:
実際、現場での従業員の行動に変化が起きています。例えば、自分の扱う商品が環境や社会に配慮したものだということに気づいたり、そのような配慮された商品を探して、自分たちで手書きのPOPを作ってお客様にもPRするようになったり、環境月間に合わせて商品の紹介を行ったりといった自発的な行動が起きるようになったのは、eco検定により環境知識を得たことが大きいのではないかと思っています。
他にも、職場体験やお子様を対象としたバックルームツアーなどを行う際に、お店で回収したペットボトルがどうなるのか、どんな環境問題が背景にあるのかなどを、自分たちで紙芝居をつくって説明したりもしていますね。自分たちだけでなくお客様と一緒にやっていきたいという思いが、お客様への情報発信という行動につながっているのだと思います。
環境に対し、サプライチェーン全体で行動する
導入から10年。「共感しながら主体的に行動を」の願いが実現
―eco検定の導入から約10年となりますが、長年続けてきたことで感じる変化はありますか。
伊藤さん:
先ほど小山さんの話にも出てきましたが、6月の環境月間になると、一番売れ筋の商品を置く店内の一等地と言えるスペースに、環境をテーマにしたステージを作って発信している店舗があるんです。店内の一等地ですから、その店舗で最も売りたいものを配置する重要なスペースです。そこに環境に配慮した商品を置いているということは、大きな変化だと感じます。
なぜこういったことができるようになったのだろうと考えると、やはりeco検定での学びが従業員の「自分事化」に繋がっていることが大きいと思うんです。2014年から始めて10年経ち、導入当初に目指していた姿が少しずつ具現化できてきていると感じています。
―この先の展望があればぜひ教えてください。
小山さん:
従業員の自発的な行動を、私たちはとても大切にしています。人材育成の面でも、会社のパーパスに対して受け身でいるのではなく、自分の意志やパーパスを持った上で、会社と一緒に成長していける人材を育成したいと考えています。そういった自発性を育む上でも、検定試験を今後も活用していきたいと思っています。
入社予定の学生さんから「入社までに何をしたらよいでしょうか」と質問を受けたときには、eco検定の受験を勧めています。また、今はマネジャー層の受験を進めていますが、今後は手上げ制でより多くの層に広めていきたいと考えています。より広く、多くの従業員に受験してもらいたいですね。
環境問題に無関係の企業はない。全ての企業に受験してほしい
―最後に、どんな課題や期待を持つ企業にeco検定導入をお奨めしたいか教えてください。
小山さん:
メーカー、物流、生産を担う企業様など、全ての取引先の方とeco検定を通して環境に関する知識を共通言語にしていくことで、当社一社では気づかないところをご提案いただけることもあると思います。
小売業を営む我々は、お客様の環境配慮への意識の変化を感じています。「この商品はどのように環境貢献しているのか」といったことも今後お客様に示していくことになると考えると、やはり、サプライチェーン全体で環境に配慮した行動を起こしていく必要があります。そう考えると、世の中の全ての企業にeco検定の導入をお奨めしたいですね。
★株式会社イトーヨーカ堂様は、
「eco検定アワード2023」エコユニット部門において優秀賞を受賞されました!
受賞した活動内容の詳細はこちらから★
企業概要
会社名 | 株式会社 イトーヨーカ堂 |
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所在地 | 東京都千代田区二番町8番地8 |
設 立 | 1920年 |
売上高 | 1兆391億200万円(2023年2月期) |
資本金 | 400億円 |
社員数 | 24,254人(2023年2月末現在) |
※ 掲載内容は2023年8月取材時のものです。